腹部大動脈切除術(AAA)外回り看護のポイント

心臓血管外科

腹部大動脈切除術(AAA)外回り看護のポイント4つ+おまけを紹介します。

1.術前と術後に足背動脈または、後脛骨動脈の確認を必ず行う。

 腹部大動脈瘤の切除では大動脈のクランプによりプラークが飛んだり、末梢の動脈解離になっていたり、吻合方法がよくない時など何らかの理由で下肢に血流が流れずに虚血になっていることがあります。そのため術後に下肢へ血流が流れているか確認する必要があります。

術前に確認していないと手術の影響で触れないのか術前から触れか悪いのか違いが分かりません。また、術前にマーキングをしていると術中にドレープを潜って確認するときに非常に助かります。

自施設では、両足にSPO2のモニターをつけています。末梢吻合後デクランプをしてSPO2の波形が出るかを確認しています。今まで何度か血流が良くないということを早めに発見することができています。しかし、緊急手術の時は体温が低い患者さんも多くいます。その時は末梢が締まっていてSPO2の波形を上手く拾えない時があります。

SPO2の波形が上手く拾えない時に、清潔ドレープの下に潜り込み足背動脈や後脛骨動脈が触れるか?ドップラーで聴取できるか?を迅速に確認できる看護師は状況をよく理解できている優秀な看護師だと思います。施設よっては、確認することがルールになているところもあると思います。しかしルールになっていない施設の人は、そのような行動が取れると医師からさすが!出来る看護師だな!と思ってもらえるかもしれません。

2.下肢を温めてはいけない

腹部大動脈を遮断するため下肢を温めると42℃以下に設定してあっても,循環が悪いために熱の局所過剰蓄積が発生し、熱傷が引き起こされます。そのためもし温めている場合は、大動脈遮断前から保温をするのを中止しましょう。これは、ベテランの看護師でも意外と知らない人がいます。ブランケットの添付文書にも【禁忌・禁止】の欄に『大動脈クランプなどで、四肢の血管が遮断され、虚血状態になっている部位には使用しないこと。[熱傷を引き起こすおそれがあるため。]』としっかり記載してされています。危険な行為なので気をつけましょう!

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4.腎動脈上クランプ時はリンゲル液の輸液を冷蔵庫に入れて冷却して準備する

瘤の場所によっては腎動脈から冷却リンゲル液を灌流する場合があります。
片腎に200〜500ml程度潅流します。そのため500mlの輸液を最低2本予備を入れて3本冷蔵庫で冷却して準備しておきましょう。

5.開創器を使用するのでベッドレール周囲を整理する。

腹部大動脈瘤切除術では多くの施設でロブスターリトラクターやブックウォルターやトンプソンリトラクターなどの開創器を使用します。支柱をベッドレールのどの位置にセットするのかをよく確認して、心電図モニターのコードや静脈や動脈ラインのチューブ、対極板のコードを挟み込まないように整理してベッドレールにそのようなものが引っかかっていないかを確認することが大切です。今までに何度か心電図モニターが出なくなったや、輸液が落ちない、動脈圧の波形がおかしい、電気メスが使えないなどのトラブルがありました。基本的なことですが大切なことなので注意が必要です。

おまけ

頻度としては低いですが、5%の確率で腎動脈にかかっているタイプの大動脈瘤があります。その時は腎動脈の再建を行います。(透析患者さんの場合は再建しません)吻合時間が長くなりそうな時やエマージェンシーとして腎動脈から血液を灌流させることがあります。その時に必要な物品を準備する必要があります。例えば、灌流用のチューブ、コネクターなどです。

まとめ

腹部大動脈瘤手術は、開心術よりも難易度は低くなります。しかし、クランプ部位が腎動脈より上なのか下なのか、腎動脈にかかっているタイプの瘤ではないかなどで難易度や準備するものが変わります。また、時々下肢の血流が悪くF-Fバイパスを追加する場合や静脈を傷つけて避けていき止血困難で大量出血を起こすこともあります。基本的には安全な手術ですがしっかり心構えをすることで緊急事態が起きた時に直ぐに対応することが出来ると思います。

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