Bentall手術介助の基本知識と手順

Bentall手術は、頻繁にある術式ではないため苦手だと感じる人も多いと思います。

私が初めてBentallの手術についたのは、夜中の緊急解離手術の時で基部まで解離しているからBentall追加すると言われたのが初です。介助したことがなかったため、術式を理解しておらず恐怖でしたが、外回りの先輩に手順書を開いてもらい、教えてもらいながら介助した思い出があります。その時の術式はTAR+Bentallとなかなかボリューミーな術式で止血にも時間がかかり、夜中の長時間手術で辛かったのを覚えています。

手術の適大動脈瘤応

大動脈基部から上行大動脈に至る大動脈瘤は胸部大動脈瘤の60％を占めるものの、95％は無症状です。解離や破裂で発症する以外は偶然発見されるものがほとんどです。したがって、定期手術における手術適応は解離や破裂の予防になります。
大動脈基部が50~60ｍｍ以上の場合は手術適応になります。

手術の流れ

送血管：上行送血
脱血管：1本脱血

冠動脈ボタンの作成

電気メスで、冠状動脈口を含む大動脈壁を約1.5～2㎝幅のボタン状に大動脈基部から切離します。

大動脈弁を切除し、大動脈弁輪のサイジングを行う。

・大動脈弁を切除します。基本的には大動脈弁閉鎖不全症（AR)が多いですが、大動脈弁狭窄症兼閉鎖不全症（ASR)の時は、弁輪に石灰化がある場合がるので石灰化を切除できるようにロンジュールも準備しておきます。

・AVR（大動脈弁置換術）のように大動脈弁輪のサイズを計測します。

サイザーは人工血管用と人工弁どちらを使用する？
サイジングは、大動脈弁のサイズを測定してそのサイズに合わせて人工血管を選択します。こちらはJグラフトのマッチングリストですが、人工弁のサイズに応じて人工血管のサイズが決まっています。

コンポジットグラフトの作成

・生体弁か機械弁を使用するかは、ムンテラの時に患者さんと話し合って決まっています。
・サイジングした弁のサイズとバルサルバ型人工血管を連続縫合で縫い付け、コンポジットグラフトを作成します。
・コンポジットグラフトは、オペレーターが自分で作成する医師もいるし、別にテーブルを準備して、他の医師に作成してもらい、オペレーターは弁輪の糸掛けを行うことがあります。その際はコンポジットグラフト作成と弁輪糸かけの同時進行になります。

大動脈弁輪に糸かけをし、コンポジットグラフトを人工弁輪に逢着する

・大動脈弁輪に2-0ネスポーレンプレジェット付き糸（AVRで使用する糸と一緒）を用いて糸かけを行う
・大動脈弁輪に掛けていた糸をコンポジットグラフトの人工弁座に糸掛けを行、人工弁を所定の位置まで降ろし、糸を結紮します。

基部の補強

外膜組織を含む残された大動脈壁と人工弁の弁座上部をプローリン糸で連続縫合し、補強します。

コロナリーボタン吻合

コロナリーボタンの移植のため、人工血管に丸い穴をあけます。メッチェンで切除したり、電池メスで円状の穴をあけます。
コロナリーボタンを5-0プローリンで連続縫合します。

人工血管-上行大動脈吻合

人工血管と上行大動脈にテフロンフェルトを巻いて4-0プローリンを用いて吻合します。

外回り看護師のポイント

体位は下肢から静脈グラフトを採取できるようにしておく

自施設では、冠動脈再建でなんらかのトラブルが起きたときのために静脈グラフトを採取出来るように、大腿部を消毒し、ドレーピングをしています。静脈グラフト採取すると言われたらすぐに対応出来るように、必要な器械、診療材料を準備しています。

バルサルバ型人工血管を使用する

Bentall手術は、頻繁にある術式ではないため若手の看護師がよく間違えてワンブランチ（1分枝）の人工血管を出しそうになります。バルサルバ型とワンブランチを間違わないように注意する必要があります。

バルサルバ型の人工血管の特徴
バルサルバ相当部に広がりがあるため、弁の開閉に障害がなくなること冠血流などが生理的である特徴があります。

まとめ

自施設では、BentallはAVRをちょっと難しくした手術と言っています。基本のAVRに+コロナリーを吻合+上行大動脈吻合です。
メインが終わったらあとは基部の止血との闘いです。基部の出血が少ないと短時間で手術が終わることが出来ます。解離のときに緊急手術になることがあるため事前学習して、心の準備しておくことをオススメします。

参考引用文献

セーフティテクニック　心臓手術アトラス　P114

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