術前カンファレンス
術式は、MAP+TAPでPLVCがあるので3本脱血します。
3本脱血?なんで?PLSVCって何?
先生から3本脱血すると言われたのですが、SVCとIVC以外にどこに脱血管を入れるんですか??
3本脱血をすると言われたときによくある場面で、このような質問をよくされます。
PLSVC(左上大静脈遺残)は頻度が少ないので、知らない人は知らないものです。
当院では、年間に1例あるかないかくらいの症例頻度です。
それと、文献で調べたりネットで検索しても、あまり分かりやすいものにヒットしないので勉強しづらいと思っていました。私が学習したことをまとめていきたいと思います。
左上大静脈遺残(PLSVC)って何?
胎生期の左前主静脈が退化しないために生ずる奇形です。
左上大静脈が冠状静脈洞に灌流する異常で、心エコー図で冠状静脈洞の拡大像を認めます。
単独または、その他の先天性心疾患に合併します。
頻度は、先天性心疾患の患者では 2~4% に合併すると報告されています。
発生学的には
胎生期の左前主静脈が何らかの原因で閉塞しなかった場合にに生ずるとされており,通常の走行は,左総頸静脈と左鎖骨下静脈が合流し,左上大静脈となり,大動脈弓,左肺門部の前方を下行し,心膜を貫通,冠静脈洞を介して右心房に開口することがもっとも多いです。
ほとんどの場合、PLSVCは無症候性であり、さまざまな理由により、診断および治療検査で偶発的に検出されます。
PLSVCは、左腕、頭と首の左半分からの総静脈血の戻りの約20%を担っています。
予想以上の静脈血量が右心房に排出されると、心臓の解剖学的構造に変化が生じます。最もよく知られているのはCSの拡大で、これはPLSVCの存在を示す有用な手がかりになります。
CS拡大による影響
・房室結節とヒス束の圧迫を引き起こす可能性があります。そのため、心房細動や心室細動などの心不整脈を引き起こす可能性があります。
・左心房の圧迫と心拍出量の低下が発生する可能性があります。
解剖
通常の解剖
・右鎖骨下静脈と左鎖骨下静脈が上大静脈(SVC)に合流して右心房へ流入します。
左上大静脈遺残の解剖
・左鎖骨下静脈と内頸静脈の接合部から始まり、大動脈弓に隣接する縦隔の左側を通過し、冠状静脈洞(CS)を介して右心房に流入します。
裏側からみた解剖
鎖骨下造影の場合
なぜ3本脱血が必要なのか?
MAP(僧房弁輪形成術)+TAP(三尖弁輪形成術)では、右房を切開する手術になります。
通常は、SVC(上大静脈)とIVC(下大静脈)から右房へ血流が流入するため、その2つの静脈に脱血管を挿入することで、右房への血流の流入を防ぐことが出来ますが、PLSVC(左上大静脈遺残)がある場合は、PLSVCが冠状静脈(CS)へ開存しそこから右房へ血流が流入します。そのため、CSから脱血管を挿入して右房への血液の流入を防ぎます。
右房を切開するPLSVC(左上大静脈遺残)のある症例では3本脱血が必要になります。
CSへの脱血管挿入方法は?
通常の脱血管挿入と変わりありません。
CSの開口部にタバコ縫合を行う⇒脱血管を挿入⇒ネラトンターニケットで固定する。
CSが拡大している症例が多いですが、大きさに合わせた脱血管を選択します。
その他心臓手術時の影響
1.SGカテーテル挿入する場合は、左鎖骨下静脈穿刺では留置困難になる。
通常は右内頸静脈から挿入することが多いため左鎖骨下静脈から穿刺することはかなり稀です。PLSVCの存在は、スワンガンツカテーテルを左鎖骨下アプローチで挿入した場合は、PLSVCの方へカテーテルがが進み、心臓の右側へのアクセスを困難にする可能性があります。
2.逆行性心筋保護は効果がありません。
PLSVCの存在は、逆行性心筋保護の投与に対する相対的な禁忌で、冠状静脈洞(CS)から逆行性に心筋保護液を注入してもPLSVC(左上大静脈遺残)を介して左鎖骨下静脈の方へ流れて行ってしまいます。
そのため、心筋保護液は通常通りに冠状静脈から冠状動脈へは流入しないため逆行性心筋保護は使用しても効果がありません。
PLSVCをクランプして、心筋保護液がPLSVCとその枝を逆行して心筋保護が不十分になるのを防ぐことができる場合があります。
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コメント
これは全く聞いたことないかったです!!ありがとうございます!
心臓血管外科手術で使用する薬剤に関する記事みたいなものはありますか?
興味があるのですが、なかなか理解しずらくて、、、
コメントありがとうございます。
心臓血管外科手術で使用する薬剤はハクトグロビンくらいしかないです。
これから記事にしていきますね(^∇^)