手術室看護師も分かりにくいデブランチTEVARってどんな手術?

心臓血管外科
まーちゃん
まーちゃん

デブランチTEVARと術式に書いてあるんですが、どこにバイパスするのかよくわかりません。

ねず子先輩
ねず子先輩

確かに分かりにくいよね・・・。ステントを入れるzoneによってバイパスする部位がだいたい分かるよ。ただ、バイパスする部位が伝票に書かれていなかったら医師に確認した方がいいよ!
医師の考え方によって変わるからね!

適応は?

    1. 開胸での人工血管置換術が出来ないもしくは周術期合併症リスクが高い症例
    2. 開胸手術既往歴がある患者
    3. 重度呼吸障害患
    4. 超高齢患者

デブランチTEVARの遠隔成績は理論的にも開胸での人工血管置換術に劣る事は明白なので適応には慎重であるべきであると言われています。

Zone別デブランチTEVARの方法

Zone2: 1 debranching TEVAR
左総頸動脈(LCA)― 左鎖骨下動脈(LSA)バイパス
Zone2へステントを留置した場合、第3枝の左鎖骨下動脈をカバーするため血流が無くなってしまいます。そのため左総頸動脈から血流を確保するためにバイパスを行います。
右腋窩動脈(AX)-左腋窩動脈(AX)バイパスを行う事もあります。
ネックレスのように首の前をバイパスする様子から、ネックレスバイパスと言う人もいます。
左鎖骨下動脈を再建する必要があるかどうかは意見が分かれています。
Zone2 TEVARにおけるLSA再建率は15~25%と報告されています。
再建しない事で上肢虚血、脳卒中、脊髄虚血のリスクが増加するという信頼あるエビデンスがないと報告されています。
Matsumuraらは、LSAを再建する適応を以下のように述べています。
  1. 左内胸動脈が冠動脈バイパスに使用されている場合
  2. 左椎骨動脈が椎骨脳底動脈の重要な血流供給源になっている場合
  3. 右椎骨動脈が閉塞ないし低形成の場合
  4. 左上肢に内シャントが作成されている場合
  5. 脊椎虚血の危険性がある肋間動脈を含むカバー20cm以上のTEVARを行う場合
Zone1: 2 debranching TEVAR
Zone1へステントを留置した場合は、第2枝の左総頸動脈と第3枝の左鎖骨下動脈をカバーするため2枝と3枝の血流がなくなってしまします。第2枝と第3枝の血流確保のため以下のバイパス方法があります。
右鎖骨下動脈(RSCA)-左総頸動脈(LCA)-左鎖骨下動脈(LSCA)バイパス

右鎖骨下動脈をドナーとしてバイパスを行う。この方法を採用する施設が多い。

 右総頸動脈(RCA)―左総頸動脈(LCA)-左鎖骨下動脈(LSCA)バイパス

食道後経路で右総頸動脈をドナーとしてバイパスを行う。
海外ではこの方法がスタンダードです。
食道後経路で行う理由は
①気管切開が必要になった時にバイパスが邪魔になり経路変更が必要になる。②グラフトの突出が目立ち、気にされる患者さんがいるため。
左総頸動脈を吻合する時、脳に行く血流を遮断しなくてはいけません。そのため吻合は時間との闘いになります。吻合手順を医師と確認し必要物品をしっかり準備する事が大切です。 外回り看護師は左総頸動脈遮断時間をタイマーで計測する事が必要です。NIROやINVOSの指標が下がる場合や吻合中にトラブルが起きた場合には、シャントチューブを使用するので準備が必要です。
Zone0: Total debranching TEVAR

上行大動脈 - 腕頭動脈 ― 左総頸動脈 ― 左腋窩動脈 バイパス

Zene0へステントを留置する場合、第1枝腕頭動脈、第2枝左総頸動脈、第3枝左腋窩動脈をすべてをカバーしてしまい血流が無くなってしまします。そのため第1枝、第2枝、第3枝と上行大動脈へバイパスを行います。

2デブランチまでは、小さい傷でウェイトラナー開創器で開創しバイパスを行えますが、トータルデブランチは開胸しなくてはならず侵襲が大きくなります。術後上行大動脈の解離をする可能性があることからあまり推奨されていません。脳梗塞のリスクもとても高いそうです。自施設でも過去に3例くらい行った事がありますが現在は行っていません。リスクが高すぎるそうです。手術時間も開胸して4ヶ所バイパスを行い、術中透視を行いながらステントを留置するため時間がかかります。

 


〜 手術室看護師のための基礎から実践まで 〜

「術式名は知っているけど、何をしているのか正直よく分からない」「医師の会話についていけない」そんな手術室看護師のために、心臓血管外科の手術・麻酔知識を体系的にまとめました。気になるテーマのリンクから詳細記事へ飛べます。

以下の7テーマに分けて解説しています。

  • CHAPTER 1|開胸・基本知識
  • CHAPTER 2|大動脈弁手術(AVR・AVP)
  • CHAPTER 3|僧帽弁・三尖弁手術
  • CHAPTER 4|大動脈・ステント手術(TEVAR・EVAR・AAA)
  • CHAPTER 5|冠動脈バイパス術(CABG)
  • CHAPTER 6|緊急・合併症対応
  • CHAPTER 7|麻酔・止血・参考書籍
🔵  CHAPTER 1  開胸・基本知識

まずここから。手術室に入る前に理解しておきたい基礎

心臓手術では術式によって切開方法が異なります。「Upper L」「Partial Sternotomy」「MICS」など術式伝票に書かれた略語の意味を理解することで、術前準備の精度が上がります。

心臓血管外科基本知識 開胸方法の種類

全胸骨正中切開から低侵襲小切開まで、開胸方法の種類とメリット・デメリットを解説。

 

🟣  CHAPTER 2  大動脈弁手術(AVR・AVP)

最も頻度の高い弁手術。糸掛けや弁縫着の「なぜ」を理解する

大動脈弁置換術(AVR)は心臓血管外科でも特に頻繁に行われる手術です。ARとASで手技・準備物品が変わる理由、糸の針の向き、スーチャーレス弁の仕組み、そして弁形成術(AVP)まで体系的に学べます。

■ AVR(大動脈弁置換術)の基本

大動脈弁置換術(AVR)AR と AS で違う3つのこと

心筋保護液ルート・ベント・心停止液の違いをAR/ASで比較して解説。

 

▶ AVR手術の糸掛けに必要な知識

弁輪部位ごとの針の向き(順針・逆針)を理解するための基礎知識。

 

人工弁縫着方法「弁尖反転縫合法」と「大動脈弁上縫合法」

InternalとSupraの違いを器械出し目線でわかりやすく解説。

 

▶ AVR(大動脈弁置換術)の術式が拡大する時とは?

上行大動脈の性状によってヘミアーチ追加になる理由を解説。

 

■ スーチャーレス弁・同時手術

看護師が知っておきたいスーチャーレス弁の知識

EDWARDS INTUITY Eliteの留置方法・適応・禁忌・注意点。

 

大動脈弁と僧帽弁の同時手術(DVR)で注意する3つのこと

2弁同時手術で手術順序と心筋保護が変わる理由を解説。

 

■ 大動脈弁形成術(AVP)

▶ AVP(大動脈弁形成術)の基本知識

AVRとAVPの比較と、弁形成術が広まった背景。

 

▶ AVP(大動脈弁形成術)の手順

弁輪形成・弁尖形成の手順と使用器械の解説。

 

▶ Schafers Caliper 知っていますか?

AVPで使用する弁計測器「Schafers Caliper」の役割と使い方。

 

自己弁温存基部置換術 remodeling法と reimplantation法の違い

AAEに対する2つの術式の歴史と違いをまとめた解説。

 

 

🟢  CHAPTER 3  僧帽弁・三尖弁手術

解剖から合併症まで。弁形成の「なぜ」を理解する

 

僧帽弁は複雑な解剖と多様な形成術が特徴です。Carpentier分類や弁尖の番号体系を押さえれば、術中の医師の動きが読めるようになります。三尖弁は「忘れ去られた弁」とも呼ばれますが、近年その重要性が再評価されています。

 

僧帽弁形成術(MVP+MAP)の基本知識

解剖・Carpentier分類・弁尖の番号体系を図解で解説。

 

▶ SAM(僧帽弁の収縮期前方運動)ってなに?

MVP後に起こるSAMの病態・原因・術中確認方法。

 

三尖弁手術の基本知識

治療が軽視されてきた歴史的背景と、現在の治療方針の考え方。

 

 

🟠  CHAPTER 4  大動脈・ステント手術(TEVAR・EVAR・Bentall・AAA)

緊急から待機まで。「ゾーン」と「合併症」を押さえる

 

大動脈手術は緊急性が高く、TEVARのゾーン・エンドリーク・デブランチ手技など専門用語が多い領域です。術前カンファレンスで医師が何を話しているか理解できると、準備の質が格段に上がります。

 

■ TEVARの基礎

いまさら聞きにくいTEVARのゾーン(zone)について

Landing Zoneの概念と解剖的分類(Zone 0〜9)を分かりやすく解説。

 

手術室看護師も分かりにくいデブランチTEVARってどんな手術?

Zoneごとのバイパス部位とデブランチTEVARの適応・手術方法。

 

ステント治療の合併症 エンドリークって何?

エンドリークのType I〜Vの分類と術中対応の考え方。

 

■ 大動脈基部手術(Bentall手術)

▶ Bentall手術介助の基本知識と手順

Composite graftを用いたBentall手術の適応・手順・注意点。

 

■ 腹部大動脈瘤(AAA)

腹部大動脈瘤手術(AAA)の基本知識

解剖・確認事項・術式の選択について基礎から解説。

 

腹部大動脈瘤手術(AAA)one rank upの知識

腎保護・IMA再建判断など応用的な知識をまとめた解説。

 

腹部大動脈切除術(AAA)外回り看護のポイント

術前・術後の足背動脈確認・SPO2モニタリングなど外回り実践ポイント。

 

 

🔴  CHAPTER 5  冠動脈バイパス術(CABG)

OPCAB・on pump・MICSの違いから流量評価まで

 

CABGは術式名のバリエーションが多く、「OPCAB」「on pump beating」「MIDCAB」など似た名前が並ぶため混乱しやすい領域です。グラフト採取から吻合評価まで段階的に学べます。

 

【術式の違い】冠動脈バイパス術(CABG)の手術介助①

OPCAB・on pump beating・on pump arrestの違いと適応を解説。

 

【解剖・グラフトの理解】冠動脈バイパス術(CABG)の手術介助②

冠動脈番号の覚え方とグラフトの種類(LITA・SVG)の特徴。

 

【手順】冠動脈バイパス術(CABG)の手術介助③

グラフト採取から中枢・末梢吻合までの具体的な手術手順。

 

【よく使われる用語】冠動脈バイパス術(CABG)の手術介助④

Sequential吻合・Composite・Intact など術中用語を一覧解説。

 

【流量測定・フローメーター】冠動脈バイパス術(CABG)の手術介助⑤

TTF(Transit-Time Flow)の見方:平均流量・PI・DFの基準値。

 

「MIDCAB」と「MICS-CABG」の違い

低侵襲CABGの歴史と、MIDCABとMICS-CABGの手技上の違い。

 

 

🔶  CHAPTER 6  緊急・合併症対応

急性大動脈解離・AMI合併症・PLSVCなど

 

緊急手術では判断と動作のスピードが求められます。病態を理解していると、医師の指示の意味が即座に分かり、安全なサポートができます。

 

急性大動脈解離で下肢が虚血している時 加温して大丈夫?

解離による下肢虚血の病態と、加温が禁忌になる理由を解説。

 

下肢虚血後の再灌流障害『コンパートメント症候群』どんな病態?

減張切開が行われる病態の仕組みと、看護師が知っておくべき経過。

 

【余裕があれば知って欲しい】急性心筋梗塞の合併症に対する手術

VSP・FWR・PMRなど、AMI合併症手術の種類と準備のポイント。

 

左上大静脈遺残(PLSVC)と3本脱血の関係

なぜ3本脱血が必要になるのか。PLSVCの解剖学的背景を解説。

 

 

⚪  CHAPTER 7  止血・参考書籍

周術期管理の全体像を知る

 

手術室看護師が知っておくと役立つ、止血管理のポイント、そして自習に役立つオススメ書籍を紹介します。

 

心臓手術の止血 フィブリノゲン値とFFP投与

フィブリノゲン目標値・FFP投与量の目安など止血管理の実践知識。

 

心臓血管外科・心臓麻酔のオススメの本

初心者から中級者まで役立つ書籍を厳選して紹介。

 

 

 

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