下肢虚血後の再灌流障害『コンパートメント症候群』どんな病態?

心臓血管外科

緊急の急性大動脈解離の手術が無事に終わり患者さんがICUへ入室して安心していたら、次の日や数時間後に「解離術後の患者さんICUに入って減張切開したみたいだよ。」という話を聞くことがあると思います。手術室で減張切開を行う事がないのでどのような病態で処置が行われてるかいまいち分らない手術看護師は多いのではないかと思います。減張切開後の閉鎖や皮膚移植やデブリドマンや下肢切断目的の手術で結構豪快に皮膚を切開しているのにビックリしますよね。

コンパートメント症候群(compartment syndrome、区画症候群)とは?

コンパートメント症候群(compartment syndrome、区画症候群)とは、骨・筋膜・骨間膜に囲まれた“隔室”の内圧が、骨折や血腫形成、浮腫、血行障害などで上昇して、局所の筋・神経組織の末梢循環障害を呈した病態です。この病態の怖いところは、内圧上昇・圧迫によって不可逆的な筋壊死と神経麻痺を起こします。下腿(特に脛骨外側前面)や前腕に発症しやすいです。
「コンパートメント」は区切られた小部屋・隔室の意味で、「区画」と表現されることもあります。コンパートメント症候群と区画症候群は同義です。

  ●●下腿コンパートメント●●

再灌流障害によるコンパートメント症候群はなぜ起こる?

血流再開によって流入した血液中の水分は、虚血により細胞膜の透過性が破綻しているため、血管外へ急速に漏出して,平滑筋細胞は膨化をきたし急激に下肢の腫脹をきたします。さらに,毛細管の攣縮や白血球塞栓による閉塞,血管内皮細胞の傷害が起こり,組織の虚血が進行します。

コンパートメント症候群ではどんな症状が出る?

急性動脈閉塞は突然に発症する下記5個の症状を特徴として発症することが知られています。

症状の頭文字より“5P “症状と呼ばれます。

  1. 患肢の疼痛:Pain
  2. しびれ:Parensthesia
  3. チアノーゼ :Pallor
  4. 脈拍消失:Palselessness
  5. 麻痺:Paralysis

・急性下肢動脈閉塞を発症すると神経、筋肉、皮膚の順に虚血性壊死が進行していきます。

筋膜切開術(減張切開術)の適応

・区画内圧が,30mmHg(正常値は8mmHg 以下)を超えたら筋膜切開術の適応です.
・毛細管の透過性の亢進や筋肉浮腫が出現して各区画内圧が30 mmHg以上になると,神経や筋肉が非可逆的変化に陥るとされています。

ゴールデンタイム

・血行再建のゴールデンタイムは6時間以内とされています。
・多くの場合、動脈閉塞から6‐8時間経過すると神経と筋肉の一部が不可逆的な壊死に陥ることが知られています。従って、6‐8時間以内に適切な加療が実施されるべきであり、特に神経症状(しびれ、知覚鈍麻)が認められた場合には、緊急での処置が必要です。
・一般的に6時間以内に血流を再開しないと下肢切断や麻痺症状が残る場合があります

減張切開を受けた患肢はどうなる?

・一定期間は創を開けたまま管理することとなりますが、虚血に陥っていたこともあわせると、感染には非常に弱いと考えられます。創管理も重要となります。
・知覚障害は、駆血の進行に伴い、知覚異常、知覚鈍麻、知覚脱出へと進行します。その後、筋力低下などの問題をひきおこします。

 

 

 

 

 

 

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