AVR手術の糸掛けに必要な知識

心臓血管外科

 

後輩が医師から術中に怒られていることの1つにAVRの弁輪の糸掛けの針の向きをどのように持針器につけるか?があります。

医師から・・・・

外科医
外科医

交連部に掛けてるからそうなるって分かるでしょ!!

外科医
外科医

術野観たら分かるでしょー!!

って怒られているのを見かけます。そんなことを医師から術中に怒られても分かります??
次は順針ね。次は逆針ね。などちゃんと指示をしてくれる医師が多いですが、なかには怒る医師もいます。

器械出しに付き始めてまもない看護師は、手順を頭の中で追いながら器械と糸を準備するのがやっとだと思います。それなのに今、無冠尖に掛けているから順針ね。今右冠尖にかけているから掛けにくそうにしているとか思えるようになるのは、熟達した看護師じゃないと無理!!と思います。
しかし、それを強要してくる心臓血管外科の医師がいます。外回りから後輩をみていてハラハラし、分かるわけないじゃんと思います。ただ最近は、最低限の知識をちゃんと教えた方がいいなと思うようになりました。

そもそも右冠尖、左冠尖、無冠尖、交連部ってなに?

外側から見た場合、バルサルバ洞から右冠動脈と左冠動脈が出ています。その下に大動脈弁があります。

大動脈を切開し内側から見たら、大動脈弁の上側に右冠動脈口と左冠動脈口がある弁尖と、上側に冠動脈口がない弁尖があります。

右冠動脈口がある弁尖を右冠尖、左冠動脈口がある弁尖を左冠尖、冠動脈口のない弁尖を無冠尖といいます。

右冠尖、左冠尖、無冠尖の接合部が交連部になります。

器械出し看護師からみて弁尖はどの方向に見えるのか?

視野によっては術野がしっかり見えない時もあります。そのため私はだいたいの目安として以下のように認識しています。

左冠尖は患者さんの頭側になります。
右冠尖は患者さんの足側で器械出し看護師側になります。
無冠尖は患者さんの右側でオペレーターの医師側になります。

弁置換の糸はどのような針の向きでかけるのか?

大動脈弁上縫合法(supra annular法)=垂直マットレス縫合の場合

医師の好みによりますが、まずは交連部の3ヶ所に針糸を掛けます。

  • 左冠尖は、順針持ちで針糸をかけていくことが多いです。角度によっては逆針になります。
  • 右冠尖は、逆針持ち又は特殊な持ち方ですが針を縦持ちにして掛けていくことが多いです。
  • 無冠尖は、順針持ちで針糸をかけていくことが多いです。

右冠尖は糸針を掛けにくそうにして、無冠尖になるとスピードアップすること多い印象があります。

針糸を掛ける時に起こる可能性のあるトラブル

ブロック
無冠尖弁輪と右冠尖弁輪の近くで針糸を深くかけると、刺激伝導系を損傷してさまざまな形の心臓ブロックを発生する恐れがあります。

左冠動脈の損傷
左冠動脈弁輪の付近で針糸を深く掛けると、大動脈基部の後方を走っている左冠動脈主管部を突き刺してしまうことがあります。

最後に

AVRは他の手術と比べて手術時間が短く、手技が分かりやすいため初めの方に器械出し介助に入る多い術式だと思います。慣れている医師はスピードが速く、ついていくのややっとで術野をみて判断するのは難しいと思います。ある程度の知識があれば医師が何を言って、何をして欲しいと思っているのか判断の材料になると思います。今回の弁輪の針糸の掛け方は、大動脈弁上縫合法(supra annular法)=垂直マットレス縫合だけなので、参考になる人とならない人がいると思います。縫合方法は他には、弁尖反転縫合法(intaea annular法)=水平マットレス縫合や単純結節縫合もあります。術野モニターがあれば外回りの時に、どこの弁輪にどの針の向きで糸を掛けているのかを観察しているとだんだんと医師の癖が分かってくると思います。経験を蓄積させていづれ術野をみて判断が出来るようになれたらいいなと思います。この記事がなんらかの役にたてたら嬉しいです。

 

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