【手順】冠動脈バイパス術(CABG)の手術介助③

心臓血管外科

バイパス手術のポイントは以下の4つです。

①グラフトの十分な血流を供給できること

②グラフトの長さに過不足がなく、軸のねじれや折れ曲がりがないこと

③十分な吻合口を確保する正確な吻合

④末梢側の血管床が十分にあり、狭窄やスパズムがないこと

逆立ち

用語の説明

・末梢吻合とは、グラフトを冠動脈に吻合すること(血液供給する側)

・中枢吻合とは、静脈グラフトを大動脈や内胸動脈へ吻合すること(血液の供給源)

・心臓を脱転するとは、心臓の向きを右や左や上向きなど方向を変えること

グラフト採取

内胸動脈採取

鎖骨下動脈から分岐し胸骨の下側を走る内胸動脈を電気メスや、ハーモニックを使用して採取します。

 

大伏在静脈採取

 

・膝関節の皮膚切開は、関節のいろいろな動きにより不快感を与えたり、傷が治りにくいことがあり皮膚切開をしません。

 

・スキップして皮膚切開することにより、糖尿病や透析患者などの患者、創傷治癒がある傾向のある患者については、皮膚切開を何か所かに離して加え、切開しない部分を残すようにします。この方法は、手術創の治癒に優れており、皮膚の虚血を最小限にします。

・清潔度を考えた場合、下肢と胸部では下肢の方が清潔度が低いと考えられています。そのため器械を胸部と下肢で完全に分けて使用します。

橈骨動脈採取

 

 

電気メスまたは、ハーモニックを使用して採取していきます。スパズムを起こす可能性が高く、スパズムが疑われるときはミルリーラなどの血管拡張薬を注入します。

ITA末梢切り離し

・LTAの末梢側をヘモクリップ+切り離し、塩酸パパベリンを注入しヘモリップでクランプします。

・血管拡張作用と動脈グラフトはスパスムを起こしやすいので、その予防・解除のため採取後にパパベリン塩酸塩溶液を注入または浸漬しておきます。

SVG(大伏在静脈)損傷の確認とマーキング

・SVGの抹消側をクランプして、血液加ヘパリン生食で膨らませます。

・損傷の有無を確認して必要時ヘモクリップで止血したり、プローリンで修復します。

・SVGにねじれ防止のためにピオクタニンペンでマーキングします。

リーマースーチャー

・OPCAB手術での最も重要なことは、血行動態を障害せずに標的血管を十分に露出できるような心臓の位置決めることです。糸を心膜縫合深部の適切な位置に掛け、患者さんをさまざまな体位に適切に変えて脱転させます。
・リーマースーチャーの糸は、左側の心膜の深い部分に1~3ヶ所かけます。
・心膜縫合糸による心膜の擦過傷をさけるのにネラトンターニケットを用います。

 

吻合の手順:ITA(内胸動脈)-LAD8(左前下行枝) 端-側吻合の場合

内胸動脈による左前下行枝の血行再建は、かなり広範囲の心筋をただちに灌流することができます。

①心臓を脱転させます

リーマースーチャーやハートポジショナーを使用します。

②スタビライザーLAD8の位置にセットします

③冠動脈の剥離

冠動脈をメス15番または、ビーバーメスで剥離し、冠動脈を露出させる。止血には電気メスを使用します。(電気メスの出力を5~10に下げる)

④冠動脈クランプ

冠動脈の中枢側をクランプします。必要時末梢側もクランプします。

クランプは、エラスティック針(ゴム製の糸)orブルドック血管遮断鉗子を使用します。

⑤冠動脈切開

マイクロフェザーメスで冠動脈を切開します。

⑥冠動脈切開延長

ポッツ剪刀で切開創を広げます。

中枢側、末梢側ともに切開延長します。

 

冠動脈剪刀はいろんな角度があります。
ターゲットの冠動脈の場所でだいたい使用する角度が決まっています。

LAD吻合時 ⇒ 125度

CX吻合時 ⇒ ストレート

RCA(4PD、4PL)⇒ 90度

⑦ITA(内胸動脈)カットバック

・ITAの吻合口をトリミングし、ポッツ剪刀でカットバックします。

⑧吻合

・8-0プローリンで吻合します。(医師によっては7-0プローリン使用します。)

・2~3針かけてパラシュートでおろし吻合します。パラシュートで降ろす時に生食をかけます。

・前立ち医師は、CO2ブロアーを使用して血液を吹き飛ばし無血視野をつくります。

⑨流量測定

・吻合後流量測定を行います。

・動脈は2mmのプロ―ベを使用します。

どの冠動脈に吻合しているか分からない時の見分け方

スタビライザーの掛け方で予測することが出来ます。

LAD(左前下行枝)

・心臓の前面にあるためスタビライザーは心臓の前面に当てます。

・展開による血圧低下は起こりにくいです。

RCX(左回旋枝)

・左側面になるためスタビライザーは左側面に当てます。

・血圧が最も低下しやすい展開のため、頭低位にすることが多い。

・心臓脱転に伴うねじれにより、右心室流出路狭窄をきたすことがあり、血圧低下の原因になります。

RCA(右冠動脈4PD,4PL)

・心臓の後側になるので心臓が逆立ちしたようなポジションになります。

・心臓を立てるような感じにしてスタビライザーを当てます。

・心臓を非生理的な状態に脱転するので、血圧低下や不整脈、僧帽弁逆流の増加などから血行動態が不安定となりやすいです。

吻合の順番

LITA-LAD,AO-SVG-14,AO-SVG-4PDの場合

・基本にはまず、LITA-LAD吻合を行い心臓に血流を流してあげます。

・次に静脈の末梢吻合を行います。

・最後に静脈の中枢吻合2か所行います。

ざっくりといえば、動脈グラフト末梢吻合⇒静脈グラフト末梢吻合⇒静脈グラフト中枢吻合が基本です。

しかし、医師によってはLITA-LAD吻合を最後に行うことがあります。最初にLITA-LAD吻合すると脱転するときに突っ張り動きが制限されてしまうからや、手が慣れてから重要な吻合をしたいなどの理由があります。

上行大動脈への中枢吻合について

1.PAS・Portシステム

・唯一の自動吻合器です。静脈でのみ使用可能です。静脈の径が4mm以上必要です。

・PAS・Portシステムに静脈グラフトをセットして上行大動脈へ吻合します。

・静脈グラフトをシステム内へセットするため吻合の順番が、中枢吻合(大動脈-静脈)をしてから末梢吻合(静脈-冠動脈)の順番になります。

・吻合後少量の出血がある場合は、4-0プローリンで止血します。

当院では、あまり使用しないため滅菌切れになっている時があります。使用する前に必ず

滅菌期限の確認が必要です。慣れていない医師が使用すると失敗することがあるので、久しぶりに使用すると成功するかドキドキします。

2 Enclose Ⅱ

・吻合部はほぼ無血野で3か所まで吻合可能でデバイスの中では最もコストパフォーマンスに優れています。

・穴を2か所開ける必要があり動脈壁に対してはやや侵襲があります。

・当院では、一番人気のデバイスです。

・最近は、膜の部分がしっかり広がらないなどの不良品の回収で欠品になることが多いのが残念です。

3 HEARTSRING Ⅲ

・手技が簡便で大動脈への侵襲が比較的小さい反面、完全無血野の確保が困難で手技がやりにくい場合があります。

・1か所に付き穴あけパンチと本体が必要なため数か所使用するとコストがめちゃくちゃ高くなります。

・上行大動脈の肥厚や石灰化が激しく、ピンポイントで吻合可能な場所があるときなどに使用します。

・穴あけパンチで大動脈に穴をあけ、本体を挿入する時に大動脈から噴き出すように出血するので、医師が慣れるまで血まみれになります。その操作をしている時に術野を覗き込んだら血液を大量に浴びる可能性があるので覗き込まない方が良いです。

当院では、慣れていない医師が多いため毎回みんなで「ワー」言いながら出血を避けながら盛り上がります。

4.パーシャルクランプ

 

・昔はデバイスがPAS・Portシステムしかなかったため、パーシャルクランプがスタンダードでした。

・部分遮断鉗子は、中枢吻合が容易でコストパフォーマンスは最も良いです。

しかし、近年では中枢デバイスを用いることで脳梗塞リスクが44%減少し、上行動脈が中等度以上(厚壁2mm以上)の動脈硬化がある場合特に有効です。

手順

①パーシャルクランプで大動脈を部分遮断し

②メス11番で切開

③モスキート曲がりで切開を広げる

④大動脈穴あけパンチで丸い穴をあける

⑤6-0プローリンで吻合する。

OPCAB中枢吻合デバイス比較

 

 

吻合中の手術介助のポイント

器械出し看護師

・吻合中は静かにして物音を立てない

⇒吻合中医師はストレスフルなため気が散るようなことはしないようにする。

・吻合用のプローリンを渡したら不用意に術野側の物を触ったり、器械を回収するのを避ける

⇒悪気はなくても吻合中の糸を引っ張たり反対側の糸を把持している鉗子を誤って回収してしまう新人さんが多く、本当に危ないので慣れるまでは吻合中はじっとしておく。

外回り看護師

・心臓の脱転や冠動脈クランプにより血圧が低下したり不整脈が出やすい状況になるため、DCやペーシング用アナライザーをすぐ出せるように準備しておく

・LAD吻合で内シャントを使用する可能性が高いので物品の確認をしておく

・使用する生食は温かいものを使用する。

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参考文献

 ・ハートナーシング  31(1):  39-42, 2018

・セーフティテクニック 心臓手術アトラス 第3版

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