【術式の違い】冠動脈バイパス術(CABG)の手術介助①

心臓血管外科

 

冠動脈バイパス術のほとんどは、人工心肺を使用せず心臓が動いた状態で血管吻合をするOPCABが行われています。しかし人工心肺を使用せず手術を施行中に血行動態が崩れたときは緊急で人工心肺を使用したり、心臓を止めてバイパスを行うことがあります。

手技的にはバイパスにカニュレーションが追加されるだけなのでそんなに大きく変わりません。
しかし、あまりない症例のため迷う部分もあります。

そのため、OPCAB、on pump beating CABG、on punp arrest CABGの違いについてまとめていきたいと思います。

手術の目的

CABGでは冠動脈の狭窄・閉塞した部位の先に新たに自己の血管を吻合(バイパス)することにより、虚血にさらされた心筋に十分な血流を送ることが目的です。

CABGの適応

  1. 左冠動脈主幹部病変
  2. 三枝病変
  3. カテーテル治療不成功例
  4. ステント再狭窄例
  5. 冠動脈高度石化例 など

2014年ESC/EACTSガイドラインでは、左主幹部病変と三枝病変で大きな違いがつきました。

CABGの適応はより複雑、多枝、末梢性病変をきたしている症例が中心となってきています。

術式の種類と選択

術式は3種類

  1. 心拍動下冠動脈バイパス術(off pump CABG:OPCAB)
  2. 人工心肺下、心拍動下冠動脈バイパス術(on pump beating CABG)
  3. 人工心肺下、心停止下冠動脈バイパス術(on punp arrest CABG)

術式の違い

off pump CABG(OPCAB 人工心肺を使用せず、

心臓の拍動下で血管吻合を行う手術

on-pumpbeating  CABG 人工心肺装置を使用するが,

心臓の拍動下で血管吻合を行う手術

on-pump arrest CABG 人工心肺を使用し,大動脈を遮断して完全な心停止下

(心筋保護液を使用)で血管吻合を行う手術

 

Off pump CABG(OPCAB)

【日本冠動脈外科学会2015年 全国アンケート調査結果】

 OPCABが標準術式です。

・CABGのうち63%がOPCABで実施されています。

術後30日以内死亡率も0.06%脳梗塞発生率も0.75%と3つの術式の中で最も低いです。

術後合併症の発生率が低く、術後の回復が早いため以下の患者さんが適応となります。

  • 高齢者
  • 脳合併症を有する症例
  • 腎機能低下症例
  • 大動脈に石灰化を有する症例 など

on pump beating CABG 

OPCABが困難と考えられる症例がon pump beating CABGで行われます。

人工心肺(体外循環)を使用する理由は、血行動態を安定させることです。

この術式が適応となる病態

  • 高度の狭窄を有する左冠動脈主幹部病変
  • 急性心筋梗塞発症後間もない症例
  • 多発する心室性不整脈あるいは心室頻拍
  • 細動を有する症例、低心拍出症例
  • 著明な心拡大を伴った症例

これらの症例では、冠動脈の展開あるいはグラフト吻合中に血行動態の破綻を招く可能性があるため、人工心肺を使用し、血行動態を安定させることが最優先となります。

on punp arrest CABG 

・血管吻合において 正確な運針ができることから、on punp arrest CABGを標準術式としている施設もあります。

・海外留学経験があり、on punp arrest CABGに慣れている医師は心停止下じゃないと出来ないと言っている医師もいます。

off pump CABGとon pump CABGを比較検討した論文は数多く存在しますが、どちらも一長一短あり、優劣をつけるものではないです。

なぜ脳梗塞が起きるのか?

  • 術中の血圧低下

→ OPCAB の場合には,特に心臓を脱転させるため,血圧が低下する場合がある

  • 大動脈壁の石灰化や粥腫の脳塞栓

→ ONCAB の場合には,上行大動脈に人工心肺用カニューレを挿入する際や上行大動脈遮断する際に,動脈壁の動脈硬化部分が飛散することがある

→ どんな中枢側吻合(上行大動脈とグラフトの吻合)の際にも,塞栓のリスクはある

  • CABG 術後は過凝固の状態になり,心房細動にリズム変化した場合には,血栓ができやすい状態である.左心耳内血栓が塞栓症を起こす場合に,脳梗塞が発症する

術式別介助・必要物品の違い

【術式別一覧表】

  OPCAB Onpump beating CABG onpunp arrest CABG
人工心肺 × 使用 使用
ベント挿入 × 左室が張る場合は挿入 左室が張る場合は挿入
心筋保護液 × × 使用
上行大動脈

クランプ

× × 必要

 

心臓の脱転方法

Lima suture

ハートポジショナー

Lima suture

ハートポジショナー

敷布ガーゼなどを詰める
スタビライザー 必要 必要 基本的には不要

必要に応じて必要

CO2ブロワー 必要 必要 ×
冠動脈のクランプ 必要 必要 ×

OPCAB

・人工心肺を使用しないため人工心肺関連の物は必要ありません。

・心臓の脱転方法はリーマスチャか、ハートボジショナー使用します。

・吻合するターゲットの冠動脈を展開するために、リーマースーチャ・ハートポジショナーを使用して心臓を脱転させます。

・心臓が拍動しているためスタビライザーで心臓を固定し、吻合する場所は動かないようにして吻合しやすいようにします。

・冠動脈に血流が流れているため冠動脈をクランプして血流を遮断し、CO2ブロワーで血液を飛ばしながら吻合を行います。

On pump beating CABG

・人工心肺で送血、脱血を行い左室が張ってくるときは必要に応じて左室ベントを挿入します。

・心臓が動いている状態のまま吻合するため、心筋保護液は使用しません。

・心筋保護を使用しないため大動脈の遮断も必要ありません。

・心臓が拍動しているため、OPCABと同様でリーマースーチャ・ハートポジショナーを使用して心臓を脱転させ、スタビライザーで心臓を固定し、吻合する場所は動かないようにし吻合しやすいようにします。

・冠動脈にも血流が流れているため冠動脈をクランプして血流を遮断し、サージフローで血液を飛ばしながら吻合を行います

on punp arrest CABG

HEART nursing 2008 vol.21 no.2より引用

 

・人工心肺で送血、脱血を行い左室が張ってくるときは必要に応じて左室ベントを挿入します。

・大動脈クランプで上行大動脈を遮断してルートカニューラら心筋保護液を注入して完全に心臓を停止させます。

・心臓の脱転方法は、敷布ガーゼなどを心臓の下に挿入して吻合しやすい方向に向けることが多いです。

・LAD(左前下行枝)の場合は前面になるためスタビライザーは必要ありませんが、CX(左回旋枝)や4PD(右冠動脈)がターゲットの場合、角度が難しいため使用することもあります。

・冠動脈に血流が流れていないため、冠動脈のクランプやサージフローは必要ありません。

・内シャントチューブや外シャントチューブも必要ありません。

Lima sutureに加えて,約90%の施設でパートポジショナー(HP)が使用されているそうですが、当院ではどうしても脱転が難しい症例しか使用していません。理由は、コストが高くなるからです。

関連記事

【解剖・グラフトの理解】冠動脈バイパス術(CABG)の手術介助②

【手順】冠動脈バイパス術(CABG)の手術介助③

【よく使われる用語】冠動脈バイパス術(CABG)の手術介助④

【流量測定・フローメーター】冠動脈バイパス術(CABG)の手術介助⑤

参考文献


 

 HEART nursing 2013 vol.26 no.1

コメント

タイトルとURLをコピーしました