CABG においては 99%以上の症例が胸骨正中切開にて行われています。
当院でも基本的には開胸手術を施行し、年間に2~3例で「MIDCAB」を行っています。
LITA-LADのみの症例があまりないためMIDCAB適応症例が少ないです。
MICS-CABGはまだ実施したことがないです。
MIDCABは、経験を元にして、MICS-CABGは文献で学習した内容をまとめていきたいと思います。
OPCABG、MIDCAB、MICS-CABGの歴史
1997年頃:MIDCAB(Minimally Invasive Direct Coronary Artery Bypass grafting)とOPCAB が我が国に導入され拡 がりをみせた
1998年頃:当時のデバイスでは LITA の十分 な剝離や多枝バイパスが困難であったことなどか ら,手術数は減少し,正中切 開による多枝 OPCAB に移行していった.
2009年頃:MICS 関連デバイスの発展に伴い,左小開胸による多枝 MICS-CABG の良好な成績が報告され、MICS-CABG が 再び注目を浴びるようになった
MIDCABとMICS-CABGの違い
MIDCAB:左小開胸下に(LITA-LAD) の一枝バイパスを行う
MICS-CABG:左肋間から 直視下に左内胸動脈(LITA)を採取し、限られた胸腔内のスペースで上行大動脈への中枢吻合と、側壁や後下壁を含むすべての領域への末梢吻合の完全血行再建が可能
MIDCAB | MICS-CABG | |
LITA-LAD吻合 | 〇 | 〇 |
左内胸動脈の十分な剥離 | × | 〇 |
大動脈へ中枢吻合 | × | 〇 |
多枝バイパス | × | 〇 |
下壁や後壁への吻合 | × | 〇 |
麻酔・術前準備
・分離肺換気が必要なため、ダブルルーメンチューブで挿管を行う。
・体外式のDCパットを装着する。:体内式のDCを挿入するスペースがないため。
・体位は、左側胸部下へ枕などを挿入し、30~45度右側臥位にする。
MIDCAB
MIDCAB(LITA-LAD) の一枝バイパスと PCI とのハイブリッド治療(Hybrid Coronary Revascularization;HCR)も良好な成績も報告されています。PCI の低侵襲性と CABG の虚血改善効果の両者を兼ね備える治療として一定の患者に有用です。
必要な器械
メドトロニック株式会社カタログより引用
MIDCABでは、基本的にOPCABと同じ器械で対応できます。
左小開胸用の開胸器と左内胸動脈剥離するための開胸器と吊り上げるための器械が必要になります。
ハーモニクやスタビライザーや末梢血管吻合用の器械はOPCABGと一緒です。
開胸器:ソラトラック MICS リトラクターシステム
メドトロニック株式会社カタログより引用
・リトラクターラックにブレードを付け替えることが出来ます。
・リフトブレードには、丸い穴があいているのでそこに牽引する器械をセットすると牽引しながら内胸動脈の剥離を行うことが出来ます。
・ソラコトミ―ブレードは、開胸する時や吻合する時の開胸器として基本操作で使用します。
レトラクターネオ・クレーンレトラクター
左内胸動脈(ITA)を採取する時に開胸器を牽引するために使用します。
ガイスターカタログより引用
ケント鈎
左内胸動脈(ITA)を採取する時レトラクターネオ・クレーンレトラクターを使用しますが、ケント鈎で代用が可能です。
高砂医科工業株式会社パンフレットより引用
MICS-CABG
- 開胸部位をより外側にすることで LITA の全長剝離が可能になります。
- 外側をより大きく切開し、回旋枝や右冠動脈への吻合が可能になります。
- 経胸壁的に挿入したスタビライザーとハートポジショ ナーによって胸腔内での心臓の脱転が可能になり、すべての部位にオフポンプによるバイパスが可能になります。
MICS-CABG セットアップ
メドトロニック株式会社カタログより引用
必要な器械
MIDCABで使用する「ソラトラック MICS リトラクターシステム開胸器」と「吊り上げリフト」はMICS-CABGでも使用します。それ以外に、多枝バイパスを行うために脱転させるための器械やデバイス、内胸動脈を十分に剥離するための「長い柄のフック型ハーモニックスカル」長いウェッククリップなどの器械が必要になります。
内視鏡用ホルダーシステム
スタビライザーとハートポジショナーを保持するために使用します。
村中医療器 ホームぺージより引用
ヘッドの着脱が可能なスタビライザーとハートポジショナー
心臓を脱転させるためにハートポジショナーと、吻合時にヘッドの着脱が可能なスタビライザーを使用します。スタビライザーはRITA採取時に右肺を抑えるのにも使用出来るようです。
メドトロニック株式会社カタログより引用
参考文献
・MICS-CABG 坂口太一 兵庫医科大学 心臓血管外科 心臓 Vol . 51 No . 1(2019)
・低侵襲冠動脈バイパス手術 (MIDCAB)吉田正人兵庫県立姫路循環器病センター 心臓血管外科
日本臨牀 74(増刊号4): 466-469, 2016.
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