【余裕があれば知って欲しい】急性心筋梗塞の合併症に対する手術

心臓血管外科

急性心筋梗塞の手術は緊急冠動脈バイパス手術よりも頻度としてはかなり少なく、年間約600例~700例の開胸手術をしている当院でも年間3~5例ほどしかありません。
そのため、1回も付いたことがない人もわりと多く、しっかりした手順書まだ作成されていない施設もあると思います。当院では、2年前まで先輩の手書きの手順書がファイリングされていました。

先輩看護師
先輩看護師

緊急手術でVSPが入るよー!!〇〇さん器械出し介助についてね!!

後輩
後輩

????VSPってどんな手術ですか?心室中隔欠損症ですか?????

先輩看護師
先輩看護師

それは、VSDね!VSPよ!P!

後輩
後輩

VSPの手術に付いたことありません!!

先輩看護師
先輩看護師

あまりない手術だからね。手順書は一応あるけどひとまず教えてあげる。

 

このように、緊急手術でVSPの手術が入って、器械出し介助に指名された後輩が焦っているのを見かけます。あまりない手術のため、しっかり覚えておく必要はないかもしれませんが、急性心筋梗塞の合併症はどのようなことが起きるのか?どのような手術がされるのかは、余裕があれば知っていたら医師との会話が理解出来るようになります。
心筋梗塞後心室中隔穿孔は日本の医療現場ではVSP(ventricular septal perforation)と言われ、先天性心疾患の心室中隔欠損をVSD(ventricular septal defect)と分けて言われることが多いですが、欧米ではVSR(ventricLdarseptal rupture), VSD(ventricular septal defect)の方が一般的だそうです。

急性心筋梗塞の機械的合併症

急性心筋梗塞の機械的合併症とは、梗塞によって左心室の構造が破綻をきたす病態です。
破綻される部位により
心室中隔穿孔(ventricular septal perforation:VSP)
②心室自由壁破裂(free wall rupture:FWR)

乳頭筋断裂(papillary muscle rupture:PMR)
の3つの病態があり、いずれも短時間で血行動態の破綻をきたし致死的となります。
きわめて予後が悪く、今なお心筋梗塞急性期死亡の主な原因です。
速やかな診断と血行動態を維持して、早急な外科治療につなげることが、救命率を高める最重要課題です。

◆心室中隔穿孔

・心室中隔穿孔の発生頻度は、再灌流療法の普及とともに減少してきており、STEMI患者の1%未満になってきています。
・発症から穿孔までの期間は、以前は3~5日とされていましたが、血栓溶解療法を受けている患者では、心筋梗塞後最初の24時間がもっとも穿孔の可能性が高いと言われています。
・術前心源性ショックは,手術における早期死亡に対する危険因子である.従って,診断後は
IABPを挿入し,後負荷の軽減による心筋梗塞部,穿孔発生中隔部への壁張力を低下させ,シャ
ント量軽減および心拍出量増加により,血行動態の維持と改善に努める必要です。

手術

・要点は、確実な閉鎖と止血、残存機能の温存です。
Komeda-David法
VSP閉鎖を左室切開により施行しますが、梗塞部に左室圧が直接かからないように理論的でシンプルなKomeda-David法では、正常心筋部の境界に連続縫合することは容易ではなく、いったん1部の心筋が裂けると容易に短絡を生じる弱点があります。1.左室を切開
2.心膜パッチを3-0ポリプロピレン縫合糸で心室中隔の梗塞していない部位へ連続縫合します。
最初に中隔に縫合し、次に側壁に縫合
3.左心室に両サイドからフェルトをあててがっつり縫合

Double patch repair
発生間もない脆弱な境界不明な新鮮梗塞部に不確かな連続縫合をしないでよい。

心室中隔穿孔に対する手術の新しいテクニック東女医大誌 第 87 巻 第 4 号 頁 117~121 より引用

1.左室を切開
2.1枚目の
パッチは、VSPを介して右心室にマットレス縫合で、心室中隔を放射状に貫く。
3.2枚目のパッチは、左室側へサンドイッチ様に当てて左室自由壁の外へ大きなフェルトプレジェットに抜いて縫合する。
4.左心室から梗塞した筋肉を排除し、左心室の左右にフェルトをあててがっつり縫合する。
※右室切開をしてする方法もあります。(径右室切開のextended sandwich法)

◆左室自由壁破裂

・心破裂はSTEMIの1~6%に発症すると報告されています。
・典型的な左室自由壁破裂は胸痛と心電図上のST-T波変化で始まり、急激な血行動態の虚脱をきたして無脈性電気活動(PEA)となります。
・心破裂の発生頻度には、心筋梗塞発症後24時間以内の急性期と発症後3~5日の2つのピークがあります。
・心破裂は、初回心筋梗塞、前壁梗塞、高齢者、女性に多くみられ、心筋梗塞後、急性期の高血圧や側副血行路の未発達、心電図のQ波、ステロイド薬や非ステロイド系抗炎症薬の使用、発症後14時間以上経過後の血栓溶解療法などが危険因子となります。
・血栓溶解療法は発症後14時間以上経過してからの投与は破裂の危険を高くはするものの、全体としては心破裂の危険を減少させます。
・破裂を防ぐためのもっとも重要な因子は、早期の血行再建と側副血行路の存在である。仮性瘤は自由壁破裂の重篤な合併症であり、破裂を防ぐために早急な外科治療が必要である。

blow out型とoozing型2つに分類されます

・blow out型:心筋梗塞部が突然破裂して急速に循環虚脱に陥ります。
急速に循環虚脱に陥る危険が高く,心嚢ドレナージを行い、救命には迅速な診断と外科治療が必要です。
・oozing型:梗塞部からじわじわと出血してタンポナーデに至ります。
タンポナーデ解除により,血圧が上昇すると,出血が増加する危険があるため,治療は手術室で人工呼吸管理の下に施行することが必要です。

手術


Ischemic Heart Disease  Surgical Managementからの引用

基本術式は人工心肺を使用して、梗塞組織を除去しそこにパッチをあてて閉鎖します。
oozing型では、心拍動下にテフロンフェルト、心膜パッチ、タココンブなどを生体適合糊(バイオグル-など)で梗塞部位被覆する方法(スーチャーレス法)が有用なこともあります。

◆乳頭筋断裂による僧帽弁閉鎖不全症

・乳頭筋梗塞に伴う重症僧帽弁閉鎖不全では、梗塞範囲はむしろ小さく、左室昨機能は保たれ、過収縮を示すことが多いとされています。
・下壁梗塞に肺水腫や心原性ショックを合併した場合には、急性の僧帽弁閉鎖不全と乳頭筋断裂の可能性を念頭に置くべきです。
・必ずしも乳頭筋の完全断裂による血行動態の破綻をきたすとはかぎらず、部分断裂による重度未満の逆流に留まることもあります。
・乳頭筋断裂による重症僧帽弁閉鎖不全に心原性ショックを伴っている場合、予後は不良です。
・重症僧帽弁閉鎖不全でショックを伴っている患者に外科治療を行った場合の死亡率が40%であるのに対し、内科治療のみでは71%であったように、外科治療に一定の効果を認めています。

手術

ハートチームのための心臓血管外科手術週術管理のすべてより引用

・僧帽弁形成術か弁置換術を行います。
.MRに対しては,梗塞乳頭筋や乳頭断裂部の心筋壁は脆弱であり再建手術は困難であるため,僧帽弁置換術(mitral valvereplacement:MVR)が基本的な術式になります。
・逆流の多くは、急性であるため左房拡大がないか軽度であり、視野展開が難しいことが多い。
・弁尖、腱索、弁輪が正常に保たれていることが多く、断裂乳頭筋の形態を含めた逆流機序を正しい評価が出来れば弁形成が可能であることも多いです。

急性心筋梗塞合併症の特徴の一覧表

特徴 心室中隔穿孔 左室自由壁破裂 僧帽弁乳頭筋断裂
頻度 ・STEMI患者の1%未満
・心原性ショック患者:3.9%
・STEMIの1~6%
・PCIはリスクを低下させる可能性あり
・約1%
・後乳頭筋>前乳頭筋
発症時期 ・ピーク:24時間以内と3~5日
・期間:1~14日
臨床症状 ・胸痛、呼吸困難、低血圧 ・胸痛、失神、低血圧、不整脈、嘔気、不穏、突然死 ・突然の呼吸困難と肺水腫、低血圧
身体所見 ・粗い汎収縮期雑音
・thrill(+)・Ⅲ音
・肺水腫
・両室不全
・心原性ショック
・頸動脈怒張29%、
奇脈:47%
・electromechanical dissociation
・心原性ショック
・柔らかい心雑音、thrill(-)
・重症肺水腫
・心原性ショック
心エコー所見 ・心室中隔穿孔
・左ー右シャント
・右室負荷所見
・心膜液貯留
・心嚢内の血腫
・心筋の亀裂
・心タンポナーデの所見
・左室の過剰収縮
・乳頭筋ないし腱索の断裂
・弁尖の過剰な動き
・重症僧帽弁逆流
  右心       カテーテル ・右房から右室での酸素飽和度の上昇 ・心室造影では確認困難、心タンポナーデの典型的所見は常に現れず ・右房-右室の酸素飽和度上昇なし
・v波増大
・肺動脈楔入圧上昇

冠動脈バイパス術は必要か?

冠動脈バイパス術を併施するかどうかについては意見の分かれるところです。
梗塞責任病変への血行再建は必須ではないが,非梗塞部位の冠動脈に有意狭窄がある場合は冠動脈バイパス術を併施することで病院死亡率には影響しないものの,長期予後を改善するという報告もあります。
日本胸部外科 学会の年次報3告によると,心室中隔穿孔に対する手術において冠動脈バイパス術を併施したのは26%だったとのことです。

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参考文献

・月刊地域医学 32(8): 710-711, 2018循環器ミニレクチャー心室中隔穿孔 尾田 毅
・X心筋梗塞の臨床 急性心筋梗塞の治療急性心筋梗塞の主な合併症機械的合併症(左室壁破裂・心室中隔穿孔・乳頭筋断裂)鈴木伸一

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