大動脈弁と僧帽弁の同時手術で注意する3つのこと

心臓血管外科

単独の弁手術の手順は書籍に乗っていますが、同時2弁手術の時などの資料って紹介されていることが少なくないですか?単独の手術介助は手順書を覚えれば介助に付けますが、同時2弁手術や3弁手術などの複合手術になると、応用が重要になり理屈を考えながら介助をしないと付いていけないことが多くなると思います。私が経験したり、先輩や医師から教えてもらった知識をまとめました。

手術の順番はどのようになる?

大動脈弁の手術の原因疾患が、閉鎖不全症(AR)か狭窄症(AS)のどちらかで手術の順番が少し変わります。

大動脈弁閉鎖不全症(AR)の場合

大動脈弁閉鎖不全症(AR)の場合は、以前お話したように心筋保護液がルートカニューレから注入できないため、直接冠動脈へ心筋保護を注入することになります。

1)上行大動脈をクランプした後は、大動脈を切開します。

2)直接冠動脈へ心筋保護液を注入し、心臓を止めます。

※場合によってはこの段階で大動脈弁尖を切除する医師もいます。

3)左房切開を行い、僧帽弁の手術を施行、左房を閉鎖します。

5)大動脈弁の手術を行います。

このように、一旦大動脈弁手術の手技を途中まで行い⇒僧帽弁の手術を終わらせる⇒再び大動脈弁の手術へ戻るといったちょっと複雑な手順になります。

大動脈弁狭窄症(AS)の場合

大動脈弁狭窄症(AS)の場合は、心筋保護液はルートカニューレから注入出来るため手順はシンプルになります。ただし、大動脈弁狭窄症兼閉鎖不全症(ASR)の場合は、閉鎖不全症の逆流が多い場合はARと同じ扱いになります。

1)上行大動脈クランプ

2)心筋保護液をルートカニューレから注入し、心臓を止めます。

3)左房切開を行い、僧帽弁の手術を施行。左房を閉鎖します。

4)大動脈弁の手術を行います。

このように、僧帽弁手術を終わらせて、大動脈弁手術を行うというようにシンプルな流れになります。

僧房弁の手術を先に行うのはなぜか?

大動脈弁の手術と僧帽弁の手術を同時に行う時は、僧帽弁の手術を先に行います。

理由は、大動脈弁と僧帽弁は解剖的に隣接しています。そのため大動脈に人工弁を先に装着してしまうと、僧帽弁輪への糸がとても掛けにくくなるからです。

私は、以前から大動脈弁を先に人工弁に置換してしまうと僧房弁がそんなにやりにくなるものなの??と疑問に思っていました。しかし、1度だけ先に大動脈弁をした後に僧房弁の手術をした介助に付いたことがあるのですが、普段なら弁輪の糸をすらすらと掛けている医師がかなり、難渋しながら「はー」とか「ふー」とか言いながら掛けている姿を見て、本当にやりにくくなるんだなと実感しました。

医師によっては、AVR+MVRのように大動脈も僧帽弁も弁置換になる場合は、すごく複雑な手順になることもあります。大動脈弁輪の糸を僧帽弁に隣接している部分だけ先に3針~4針掛けて、その後僧帽弁置換を行うという医師もいます。

大動脈閉鎖不全症(AR)のAVRと僧帽弁形成術(MVP+MAP)の時に注意することは?

大動脈弁の代わりにバルブゲージなどで蓋をします。

大動脈弁閉鎖不全症(AR)の時は、上記でも記述したように、心筋保護液が大動脈ルートカニューレから注入できないため大動脈を切開します。

僧帽弁形成術では、僧帽弁から左室内へスポイドで水を注入する水テストや逆流テストを行います。しかし、上行大動脈を切開していると左室内へ注入した水はそのまま漏れ出してしまい左室内を充満させることが出来ず、水テストが出来なくなってしまいます。

そこで、大動脈弁の代わりに円柱型のサイザーやAVPの時に大動脈径の計測で使用するバルブゲージで上行大動脈に蓋をして水が漏れないようにして水テストを行います。

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