腹部大動脈の解剖
・左右の腎動脈(RA):瘤の場所が傍腎動脈型か?大動脈クランプは腎動脈より上か下か?腎動脈を再建するのか?など何かと重要になります。
・腰動脈:大動脈を切開すると腰動脈から出血するため穿通結紮します。瘤の外側から分かる範囲であらかじめ結紮してから、瘤を切開する医師もいます。
・下腸管膜動脈(IMA):再建するのか?しないのか?何かと良く出てくるワードです。
・総腸骨動脈(CIA):“コモン”という医師も多いです。末梢吻合場所として重要です。
・内腸骨動脈(IIA):末梢吻合場所として重要です。
・外腸骨動脈(EIA):末梢吻合場所として重要です。
腹部大動脈瘤手術につく前に医師に確認する事
- 瘤の場所は腎動脈上か?腎動脈にかかっているタイプではないか?
- 中枢クランプ部位は腎動脈上か下か?
- 腎動脈上クランプをする場合腎動脈を潅流するのか?
- 末梢はどこに吻合するのか?
- IMAは再建するか?
- 腎動脈を再建する時に必要な物品は?
瘤の場所は腎動脈上か?腎動脈にかかっているタイプではないか?
腹部大動脈瘤の95%は腎動脈の下にできると言われています。
腎動脈を絡んだ場所にある瘤は5%以下だと言われています。しかし、ステントグラフトの進化により腎動脈下の腹部大動脈瘤はEVARで治療することが多く、開腹術になるのは腎動脈を絡んだ大動脈瘤のことも多々あります。腎動脈を絡んだ瘤の時は腎動脈を再建しなくてはいけません。中枢クランプ場所は腎動脈上になります。
- 腎動脈を絡んだ瘤(傍腎動脈型)→腎動脈上クランプ。腎動脈灌流。腎動脈再建
- 腎動脈下の瘤 →腎動脈下クランプ
中枢クランプ部位は腎動脈より上か下か?
95%は腎動脈の下にできると言われていますが、腎動脈下でもギリギリの場所に瘤がある場合や解剖的にクランプができない時があります。右腎動脈下の左腎動脈上ということもあります。腹部大動脈をどの部位でクランプをするのかによって腎動脈から冷却リンゲル液を灌流させるかのかしないのかの確認が必要になります。
末梢はどのに吻合するのか?
中枢吻合は腎動脈上か腎動脈下の腹部大動脈大だというのは変わりませんが、末梢吻合の場所は瘤の場所や末梢に閉塞しているかいないかによって変わります。
基本的には、左右の総腸骨動脈に吻合します。
しかし、内腸骨動脈瘤で吻合する場所がない時は外腸骨動脈に吻合して内腸骨動脈を結紮する場合があります。
一番吻合方法が多くなるのは、左右両方とも内腸骨動脈と外腸骨動脈に吻合する場合は4箇所吻合する時があります。
人工血管を縫い合わせることも出来ますし、末梢が4分枝になっている専用の人工血管があります。
ごく稀ですが、瘤が腹部大動脈に限局している場合はIグラフトで吻合する場合もあります。
下腸管動脈(IMA)は再建するか?
IMA:下腸間膜動脈は、腹部大動脈の瘤壁にあります。再建する時は瘤壁からIMAを剥離して切り離し人工血管に小さい穴を開けてそこに吻合します。
IMAを再建するか、しないかは医師の考え方によって違います。
NOMIが怖いから必ず再建する。
バックフローがあるからしない。
IMAが閉塞しているから再建しない。結局再建しないという医師もいます。
腎動脈を再建する時に必要な物品は?
基本的には腎動脈上クランプで腎動脈に冷却リンゲル液灌流することが多いですが、場合によっては腎動脈に血液を灌流させることもあります。中枢吻合後に末梢側の人工血管にカニューレを接続して血液を灌流させることも可能です。
ほとんどすることはありませんが、そのような時にはどのような準備が必要かを知っておくことも大切です。
関連記事
参考資料
・心臓・大動脈外科手術 基本・コツ・勘所
・ハートチームのための心臓血管外科手術周術期管理のすべて
コメント