AVR(大動脈弁置換術)の術式が拡大する時とは?

心臓血管外科

AVRの予定がヘミアーチが追加になり手術終了後疲れている後輩との会話の場面

後輩
後輩

AVRの手術予定だったのにヘミアーチが追加になったんです。

エコーして急に決まったので大変でした・・・(;゚Д゚)

なんでヘミアーチ追加になったんですか?

先輩
先輩

それは大変だったね!AVRは患者さんの上行大動脈の性状によって、送血部位が変わったり、ヘミアーチになったりするんだよ・・。

術式が拡大する要因は?

  1. 上行大動脈遮断する場所はあるが、送血管を挿入する場所がない時
  2. 上行大動脈に石灰化やプラーク、壁の肥厚があり、大動脈を遮断する事が出来ない時
  3. 大動脈基部が50mm以上あった時

拡大手術にはどんな術式があるの?

基本的に大動脈遮断を優先に考えます。

・大動脈遮断は出来るが、送血管を入れる場所がない時= AVR+AxA(腋窩動脈)送血

・大動脈遮断をする場所がない時=AVR+hemiarch

・予想よりもバルサルバ洞の径が大きかった時=Bentall
※基本的には術前にバルサルバの径を計測しているので急にAVR⇒Bentallになるといよりは、
AVRもしくはBentallという術式で記入されている事が多い。

術式の説明

AVR+AxA送血

・上行大動脈を遮断するスペースはあるが、第1枝ぎりぎりになり送血管を挿入するスペースがない時に、送血部位をAxAに変更する。
・鎖骨下からアプローチをして腋窩動脈に人工血管8mm or 9mmを縫い付けて送血経路を確保し、大動脈遮断をおこない、普通にAVRの手術を行う。
・施設によってはFA(大腿動脈)からの送血を行う場合もあるかもしれません。医師によっては、FA送血は逆行性送血になるので嫌がる医師もいます。下行大動脈にプラークがあったり汚い時はできません。

AVR+hemiarch

・上行大動脈に遮断するスペースがない時は、ヘミアーチが追加されます。
・送血部位は、AXA(腋窩)送血 or FA(大腿動脈)送血が行われます。
・上行大動脈の遮断が出来ないため循環停止を行います。
・脳には血液を流さないといけないためSCP(選択的脳灌流法)が行われます。
・手順の流れは、循環停止⇒選択的脳灌流用カニューレの挿入⇒心筋保護注入⇒末梢人工血管吻合⇒人工血管側枝送血⇒循環再開⇒AVR⇒中枢人工血管吻合

最後に

医者は、術前のCTで大動脈の性状や大きさを必ず確認おり、事前に分かっている時は予定の術式に折り込まれています。術中の上行大動脈のダイレクトエコーで初めて判明する事もあるので、事前に術式が拡大する可能性がある事を心得ておくと突然の術式変更でも心の準備が出来ると思います。

しかし、AVRは器械出し看護師の登竜門的な術式なため独り立ちして間もないまたは、初めての一人立ちの時に術式が拡大した時は本当に焦ります。(器械出し看護師も指導者看護師も)鎖骨下送血くらいなら良いのですが、ヘミアーチとなると脳分離や循環停止が行われるためさすがに1人では対応困難にあるためすぐに一緒に器械出しに付けるようにスタッフを探します。ただ、循環停止の場合クーリングを行い体温を20℃~27℃程度まで下げるため、その時間の間にスタッフの手配と器械診療材料の準備を行う事が出来ます。

大動脈弁の手術の時だけではなく、僧帽弁の手術など人工心肺を回す手術では、上行大動脈の性状によってこのように拡大手術になる可能性はあるのですが、僧帽弁の手術よりも大動脈弁の手術の時が一番拡大手術になる可能性が高いい印象があります。

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