最近読んだ本で看護技術教育につかえるな!と思った本の内容を紹介します!
教える事は、3つの技能に分類されます。
運動技能、認知技能、態度技能それぞれに適した教え方に適した理論があります。
運動技能:
お箸の持ち方や、自転車の乗り方、トランペットの吹き方というように身体で覚えていくタイプの技能です。
認知技能:
記憶すること、問題を解決すること、話したり書いたりすること、というように、記憶や思考を使うタイプの技能です。
態度技能:
金銭感覚を身につける、モチベーションを上げる、リーダーシップをとるなど、「よし、これをやろう!」と決断する技術です。身体で覚える「運動スキル」と、頭を使って考える「認知スキル」の2つを使って、自分の気持ちをコントロールしながら決断していきます。
手術室看護師の器械出し技術は「運動技能」に分類されると思います。そのため運動技能についてお話します。
運動技能の習得過程
技能の種類によっても異なるので一概にはいえませんが、一般的には3段階があります。
第1の認知の段階 :「頭で理解する」
技能の特徴を認知的に把握する段階である。すなわち、個々の動作を正しく実行するためにはどのような点に注意すればよいかを「頭で理解する」段階といえます。この段階に正しい運動プログロムが形成されるかどうかが、その後の技能の状態に大きな影響を及ぼします。間違った理解のまま練習を続けば、それはやがて悪い癖となり、技能の上達の妨げになるので注意を要します。この段階の動作は、頭で1つ1つ確認しながら実行するので、スピードが遅く、エラーも多いです。したがって、この段階で最も注意するべきポイントは、熟達者の模範演技を参考するなどして、運動のコツを正しく把握する事です。
第2の体制化の段階:「運動として覚える」
認知的段階で形成された運動プログラムに沿って、個々の動作を一連の運動として体制化する段階です。。
この段階になると、動作は次第にスムーズになり、無駄な力も使わなくなるので疲労も少なくなります。したがって、この段階で注意するべきポイントは、個々の動作が正しく体制化されているかどうかを慎重にチェックすることです。もし自分自身でチェックするのが難しいようであれば、ビデオに録画してチェックしたり、コーチにチェックしてもらうなどの工夫も大切です。
第3の自動化の段階:「自動的に運動を遂行出来る」
動作はさらにスムーズになり、意識のコントロールなしに、ほとんど自動的に運動を遂行できるようになります。また、初心者にはわかりにくい微妙な手がかりやフィードバックを感知し、それを運動の遂行に利用できるようになります。このように運動技能の習得には長い期間の反復練習を必要とします。また、習得の過程で、練習をしても成果が現れず、技能の上達がしばらく停滞する事がります。これは、高原現象(プラトー)と呼ばれる現象で、意欲の低下や疲労の蓄積、上達に伴って技能の複雑さが増すことなどが原因となって生じると考えられています。このため、途中で練習に飽きてしまったり、上達を諦めてしまうようなことになりやすいです。したがって、そうならないためには、効果的な練習方法を用い、適切な計画の下で練習を行う事が大切です。
運動技能を教える3つの原則:
「人がやる気になる。夢中になる」基本スキル
1. スモールステップの原理:単純で優しい課題から少しずつハードルを上げていく
運動技能習得に必要なのは「成功体験」の積み重ねです。はじめは決して失敗させてはいけません。たとえ自分がそうやって指導されてそれが上手くいったとしてもです。難しいことや失敗は、ある程度自身がついてから経験させましょう。
「スモールステップの原則」で少しずつ進む 運動スキルを教えるためには、まず誰にでもできるやさしいステップから始めることです。それができたら、ほんの少しだけ難しいステップに進みます。そして、それをマスターしたら、またほんの少しだけ難しいステップに進みます。 こんなふうにして、少しずつ少しずつ、より複雑で難しいステップに進みます。これを「スモールステップの原則」と呼びます。
スモールステップの原則に従って教えれば、学ぶ人は「失敗することなく」学んでいきます。もちろん小さな失敗はあるかもしれませんが、たいていは何度かトライすれば、そのステップはマスターできます。 反対に、スモールステップの原則に従わないで、いきなり複雑で難しい課題に挑戦させると、失敗する確率が高くなります。
ですから、できるだけスモールステップの原則で進めるのがコツです。
2. 即時フィードバックの原理:相手のやる気を刺激しましょう。
スモールステップでトレーニングを進めていくときには、どんなことに気をつければいいのでしょうか?それは相手をよく観察することです。そして、もしうまくいったら、「オーケー、できている!」と声をかけましょう。 このように、相手の行動に対して声をかけるなどの反応をして相手に伝えることを「フィードバック」と呼びます。「オーケー、できている!」というのは、「うまくいったよ」というフィードバックなのです。
逆に、うまくいかなかったときにもフィードバックします。「今のはできなかったね」と伝えればいいのです。フィードバックは、その行動が起こった直後、〝できるだけすぐに〟します。これを「即時フィードバック」と呼びます。相手が課題をクリアしたときに「オーケー、できている!」と声をかけることがフィードバックです。
このとき、「できている」というのは「できている」という情報だけを伝えています。
また、できなかったときの「今のはできなかったね」というフィードバックも、「できなかった」という現状の情報だけを伝えています。 これを「情報フィードバック」と呼びます。
情報フィードバックだけでは物足りなくて、「できたね。すごいね!」とか「すばらしい!」というような「ほめ言葉」を足したくなるかもしれません。 この「ほめ言葉」を「評価フィードバック」と呼んで、「情報フィードバック」と区別することにしましょう。なぜなら、スモールステップでの教え方は先が長いのです。うまくいくたびにほめていたら、相手もそれに慣れてきて、ほめられてもそれほど嬉しさを感じなくなってしまうでしょう。 また、「すばらしい!」とほめられてしまったら、相手は「次も絶対に失敗できないぞ」とプレッシャーを感じて、かえって緊張をして失敗してしまうかもしれません。 何事も上達するには失敗はつきものです。失敗しながらうまくなっていくのですから。しかし、ほめられ続けると失敗を恐れるようになってしまいますから、あえて、ほめすぎないほうがいいのです。 それに、ほめることは意外に難しいものです。たとえば「できたね。やればできるじゃないか」というほめ言葉は、あまり嬉しくありません。「普段からちゃんとやればいいのに……」というニュアンスも含んでいるようで、逆に、注意されているような気分にさせてしまうからです。 ほめ言葉は使ってもかまいませんが、できるだけ節約しましょう。その代わりに情報フィードバックを使ってください。
3. 技能と挑戦のバランスの原理:夢中にさせましょう
「人は、自分の技能とちょうどつり合った挑戦を受けると、もっともやる気が出る」という原理にあります。 技能があるのに挑戦するレベルが低いと、退屈してしまいます。
逆に、技能がないのに挑戦するレベルが高いと、「こんなこと、できるわけがない」とあきらめてしまいます。
自分の技能の100%を出せば、50%の確率で成功する。でもちょっとでも気を抜くと失敗してしまう。この状態が、バランスがつり合った状態です。そして、この状態になると、ゲームプレーヤーは夢中になってのめり込んでしまうのです。
まとめ
今回は運動技能だけ紹介しましたが、看護技術(運動技能)だけに集中せずに、なぜそうするのかのような根拠や知識(認知技能)や患者によい看護をしたという気持ちを育てること(態度技能)を上手に織り交ぜると、3つを上手に組み合わせることが効果的でだと言われています。
先輩に教わったように教えている人も多いと思います。『いちばんやさしい教える技術』という本の存在をたまたま見つけて読んでみて目からうろこでした。自分が行っている教育が理論に沿って効果的に出来ているかを振り返ることができたので、プリセプター教育にも活用しようと思います。
この記事は『いちばんやさしい教える技術』という書籍を参考にしています。 1時間~2時間程度で読めてしまう内容です。Amazonの書籍の新刊はなく中古しか販売されていません。
私は電子書籍で読みました。読みやすく、分かりやすく教育に携わっている方にはとてもオススメの1冊です。
いちばんやさしい教える技術と同じ著者:向後千春先生の「上手な教え方の教科書:入門インストラクショナルデザイン」という本もあります。『いちばんやさしい教える技術』よりもより詳しく理論的に漫画を交えながら説明されています。
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