新人教育の基礎知識 『麻酔導入』

手術室新人さんへ

実際の全麻導入の場面:急速導入編

前酸素化・脱窒素

麻酔導入時に肺胞への酸素供給が不十分になると、生命を脅かすほどの低酸素血症を起こす事があります。
そのため、まずは患者の口に、酸素マスクをのせます。患者に何回も深呼吸をしてもらい、SpO2の上昇を促します。このように、十分に、酸素化と脱窒素化を行うことで、患者が入眠した後、しばらくの間、マスク換気が出来ない、気管内挿管も出来ないような最悪な状況にも耐えられるようにします。健康な成人では、空気呼吸で1分間の無換気で70%の低酸素状態になります。適切な酸素化で低酸素状態になるのを5分以上にすることが出来ます。
脱窒素化とは、機能的残気量(安静呼吸中の息を吐いてしまった時の肺内に残っている肺容量。成人で約3Lくらい)に相当する部分の窒素を主成分とした空気を酸素と置換することをいいます。

鎮痛薬投与

・フェンタニルの作用発現時間は 3~4 分後です。

・プロポフォー、ロクロニウムは、投与時に血管痛があり、麻酔導入時に患者さんを苦しめてしまう原因となるが事が知られています。そのため血管痛を和らげる目的もあります。

鎮静薬投与

・プロポフォールの作用発現時間は1分です。

・鎮静薬を投与した後に、患者さんが入眠し、睫毛反射(まつ毛に触れた際に、まぶたを閉じてまばたきをする反射)が消失、自発呼吸が減少したらマスクを密着させ下顎を挙上し気道を確保し、マスク換気を行います。

・鎮静薬と鎮痛薬を使用し、気管挿管に耐えられるところまで麻酔を深くしていきます。気管内挿管の刺激で血圧や脈拍が上昇するのを予防するためです。

筋弛緩薬の投与

・ロクロニウムの作用発現時間は、1分30秒です。
・患者が十分に換気されていることを確認してから筋弛緩薬を投与します。
・なぜでしょうか?それは、筋弛緩薬は全身の筋肉が弛緩します。もちろん呼吸筋も筋肉でできているため自力で呼吸が出来なくなります。マスク換気が出来ない状態で筋弛緩薬を投与してしまうと、無呼吸状態が続き低酸素血症になってしまうためです。そのため筋弛緩薬を投与する前にマスク換気が出来る事を確認してから筋弛緩薬を投与します。筋弛緩薬を投与し、効果発現の1分30秒までマスク換気を行います。

当院ではマスク換気が出来る事を確認してから筋弛緩薬を投与していますが、医師の考え方によってはロクロニウムを先に投与する医師もいるようです。メリットは以下のようになります。

  • バッグマスク換気の時間を短縮できる。
  • 喉頭痙攣の出現を回避できる。(咽頭痙攣を筋弛緩薬で確実に解除出来るため)
  • 胃への送気と、それに伴う誤嚥などの可能性を低下させることができる。

ロクロニウムの作用を短時間で拮抗することのできるスガマデクス(ブリディオン®)が使用出来るようになったので、ロクロニウムを先に投与する医師も増えているそうです。

気管内挿管

筋弛緩薬作用が表れたら気管内挿管を行います。筋弛緩作用が効いていない場合患者さんは挿管の刺激により体動がありますので、ベッドから落ちないように注意が必要です。

【私が経験したトラブル】
麻酔導入をしてプロポフォールを必要量投与してもなかな眠らないし、筋弛緩薬もなかな効果が出ない。麻酔科医となんで?どうして?とみんなで首をかしげていたら、床に水たまりが出来ていることに気が付きました。静脈ラインの接続が緩んでいて床に漏れていました。初歩的なミスですが、確認は大切ですね。

 

 

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