事前学習は何をして来たらいいですか?
術式と疾患名とお薬どこまで勉強してきたらいいですか?
何を勉強してきたらいいかわかりません!!
毎年のことだけどお薬はこの本、麻酔はこの辺を勉強してきて等毎回指示ださないといけないな・・・。この質問はいつまで続くのだろう
質問してくる新人さんはまだいい。事前学習をしてきなさいと言わないと全く学習してこない新人さんがいる。どうしたらいいのだろう?なぜだろう?
そこには、学生と社会人での学習の違いがあるために生まれる疑問です。
上記の疑問を感じたことのある方には参考になる記事です。
学生は系統的に学ぶ
看護師養成機関での学びは、基礎看護学や成人看護学など教科ごとに系統的には位置された内容を教員がクラス全員に教えています。評価も、中間試験や期末試験をもとに教員が行っています。教員が決めた学習目標をもとに、学習者が理解しやすい順序で体系的に内容を学んでいく学習を系統学習と呼びます。体験学習や臨地実習などもありますが、学校での学びは系統学習がメインであるといえます。
社会人(大人)は自分の興味や関心に基づき学ぶ
新人のときはあらかじめ組まれた研修プログラムの内容にそって、外部講師や先輩看護師から教えられる機会が多いと思います。しかし、新人だからといって誰かがすべてを教えてくれるわけではなく、自分のつく手術の術式や病名、よく使用される薬剤、よく使用される略語など自ら課題を見つけて学習していきます。
看護師として経験を重ねるにつれて、決められた内容を人から教わる機会は減っていきます。看護師になってからの学びは、人から指示されたわけではなく、自分の興味や関心に基づいた学習で、大人らしい学習方法です。
子供と大人の学び方の違いは?
成長に伴う学びの変容を整理したのが、成人教育学者ノールズです。ノールズは、大人の学びは子どもの学びと異なると考えました。大人のための教育学としてアンドラゴジーの概念を広げました。
ペンタゴジー:子供に対する教育の技術と科学
アンドラゴジー:大人の学習を支援する技術と科学
アンドラゴジー、ペンタゴジーに基づく学習の考え方を比較した表は以下です。
※レディネスとは、準備性や準備ができている状態、またはある学習(課題)に対し、知識、経験、精神、身体などの必要な条件が整っている状態を指し、心理学的な用語のひとつとして用いられています。
成人学習者の特徴3つ
・大人になるにつれて、経験を学習の資源とする、経験から学ぶ
・大人になるにつれて、問題の解決に向けて学習しようとする
・大人になるにつれて、学習のプロセスを自分で決めていこうとする
新人看護師への学習方法支援の必要性
新人看護師は、年齢的にみれば成人ですが、成人学習者の特徴を身につけてない人も多くいます。それは、看護学校を卒業したばかりの新人看護師はペダゴジーからアンドラゴジーへの転換期にいるからです。看護学校を卒業したばかりの看護師の多くは、教師主導型の系統学習に慣れているため、自分で学習プロセスを決定することは苦手だといえます。実際、新人看護師を指導する場合には、学習内容について指示を与えることが多いと思います。
新人看護師が成人学習者としての特徴を身につけることができるように支援することが、一人前の看護師に成長するために必要な支援となります。
自ら学ぶ姿勢を育てるには?
大人は指示されるものを好まない
大人は理由もわからずに人から指示されて学習することを好みません。
一般的に、大人は一方的に支持されたことに対しては学習意欲が低くなります。人は大人になるにつれて自己決定性を増大させていくものです。人に指示さるものではなく、自分の責任のもとで決める学習プロセスを好みます。
自分で学習プロセスを決定する
成人教育学者のクラントンは学習プロセスを自分で決定できるようになるために7つの点をあげています。
- 自分の学習ニーズと関心を把握する
- 学習ニーズと関心に対する明確な目標を設定する
- 目標を達成するための方法を選ぶ
- 学習のための資源と教材を見つける
- 必要なときにほかの人に相談する
- それぞれの目的に即して行われた学習について証拠を集める
- 学習の効果を判断する
看護学校を卒業したばかりの看護師の場合、ほとんど出来ないのが当たり前です。指導者はこれらの点を徐々に自分で出来るように支援すること必要です。
自分で学習プロセスを決定できるように支援していための4つの段階
1.学習プロセスの決定に学習者を参加させる
学習目標を設定する場合、最初は指導者が決めるのが一般的でしょう。その場合でもただ一方的に提示するのではなく、相手の意見を聞きつつ決めていくことが重要です。目標設定のプロセスに学習者が関与することで、自分で目標を決めたという意識をもつことができます。
2.学習者に選ばせる
学習方法も、最初は指導者が提示することになります。1つの方法を提示するのではなく、複数の方法を提示し、その中から学習者が選択出来るようにすることが大切です。
3.段階的に支援を少なくしていく
学習者が自分で学習プロセスを決められるようになるにつれて、指導者は徐々に支援を少なくしていくことが必要です。
教育熱心な指導者は「学習者のために」と思い、多くの指示や指導を行ってしまう事があります。しかし、それは教育的な観点からみて好ましい行為とはいえません。指示や指導が多いと、学習者は指導者に依存してしまうからです。学習者の能力を認め信頼し、指導者が支援を少なくしていくことが教育的に好ましい行為だといえます。
4.相談しやすい雰囲気をつくる
自分で学習プロセスを決める時には「本当にこれでいいのかな」など不安や戸惑いがつきものです。後輩が自分の想いを相談しやすい雰囲気を作りましょう。また、同じような悩みをもつ同僚の状況を知るというのも、不安や戸惑い緩和に繋がります。
この記事を書いていて自分の後輩育成で反省したこと
自分で学習プロセスを決定できるように支援していためのポイントは、新人にだけ適応するのではなく、後輩を独り立ちさせるための方法と似ていると感じました。私は、チームリーダーを育成するのを失敗したことがあります。自己決定することがとても苦手な後輩だったので、このポイントでの「学習者へ選ばせる」⇒「段階的に支援を少なくしていく」を失敗したのだと思いました。今思えば彼女は私に依存しており、私の顔色をみて決定していたように思います。さまざまな理論は現場で活用するのは個人差もあり難しいところです。ただ、何が悪かったのかを知るために理論と照らし合わせることで知ることも出来ます。今は新たな後輩がチームリーダーを独り立ちする支援を行っています。今は「相談しやすい雰囲気を作る」まで出来ており頑張ってチームリーダーを行ってくれているので、ホットしています。これからも後輩が活躍できるように応援していこうと思います。
この記事の内容は、
看護現場で使える 教育学の理論と技法 メディカ出版を参考にしています。
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