はじめに
ミダゾラム(ドルミカム®)は、プロポフォールやデクスメドミジンに比べて使用する頻度は低下していると思います。当院では以前は前投薬や心臓麻酔の導入としてよく使用していましたが、現在は前投薬は行っていないし心臓麻酔の導入もプロポフォールに代わり、使用頻度はかなり低下しています。しかし、局所麻酔手術での鎮静では現在でも使用されています。そのため看護師が必ず知っておくべき鎮静薬の一つだと思います。
薬効・機序
大脳皮質GABA受容体に働き脳内伝達物質を抑制することで中枢神経系の働きを抑制し鎮静効果を発揮する鎮静薬です。
ベンゾジアゼピン受容体に働き、ベンゾジアゼピン受容体とGABA受容体との相互作用によりGABA受容体への親和性が高まり、間接的にGABA受容体の作用を増強し作用を発現します。
作用
- 鎮静作用
- 睡眠作用
- 筋弛緩作用
- 前向性健忘効果があり、嫌な記憶が残らない
禁忌患者
- 重症筋無力症患者
- ショック、昏睡患者
- アルコール中毒患者
- 急性狭隅緑内障(眼圧上昇のため)
デメリット
- 呼吸・循環の抑制
- 48時間以上持続投与で覚醒不良
- 高齢者は感受性が高い
- 離脱によるせん妄のリスクがある
使用用途
- 全身麻酔の導入・維持
- 手術前投薬
- 検査時の鎮静
- ICU人工呼吸中の鎮静
作用発現時間
- 効果発現:3分~5分(静脈注射)
- 作用持続時間:15~80分
投与量
- 麻酔前投薬:0.08~0.1mg/kg (筋注)
- 麻酔導入:0.15~0.3mg/0.3mg/kg
- 手術鎮静:0.1~0.2mg/kg
【50kgの成人に投与した場合の投与量】
【実際看護師が投与する時は】
ミダゾラム(ドルミカム®)は1Vが10mg/2mLです。そのため少量を投与しようとすると調整が難しく、計算が面倒なため、1V(2ml)+生食8ml=10ml(10mg)に希釈します。
そうすることで、5ml投与したら5mg投与したと安全に分かりやすく投与することが出来ます。
高齢者に5mgは多いと思うので、当院では3mg~4mgで投与することが多いです。
特徴
- ベンゾジアゼピン系の薬剤で作用時間が早く持続時間も短い
- 循環抑制作用は少ない:心機能の悪い症例でも比較的安心して使用出来る。
- 鎮痛作用はない
- 副作用はせん妄に注意が必要
- 鎮静深度の調整が容易
- アネキセートで拮抗出来る
ミダゾラムは大脳皮質脳幹GABA受容体に働き鎮静効果を発揮する鎮静薬です。
GABAって何?って思いませんか?
GABA(ギャバ)はγ-アミノ酪酸のことです。
気分をリラックスさせる効果を発揮する受容体になります。
GABAというチョコレートもありますが、リラックス効果を狙った商品になります。
GABA受容体に強く作用することによってリラックスすることを通り越して眠ってしまうというのがミダゾラムの薬の作用になります。
効果発現が早い(3分~5分)ベンゾジアゼピン系の薬剤で作用時間が早く持続時間も短い
ベンゾジアゼピン系というのは、ベンゾジアゼピンっていう化学式から命名されたグループ名です。
ベンゾジアゼピン系の薬剤は基本的にGABA受容体に作用しますので、基本的には精神状態をリラックスさせる効果があります。
ベンゾジアゼピン系の薬剤というとパット思い浮かぶのは抗精神病薬だと思いますが、結局はどちらの薬も気分をリラックスさせるという効果には変わりありません。違うのは、本当にリラックスを通り越して眠ってしまうまで行くのか、リラックスで止めるのかという違いになります。
実際使用する時は、抗精神病薬では作用時間が長い方がよいのでそのようなお薬を使用し、鎮静で使用する時は、起きてほしい時に起きるような作用時間の短いミダゾラムを使用します。
低血圧に注意が必要
鎮静を行うとリラックスすする状態が作られてしまうので基本的には鎮静を使うことで血圧が下がります。
絶対に気道と血圧に注意が必要です。
ミダゾラム(ドルミカム®)を投与した高齢患者はせん妄になりやすい
原因は分かっていない事が多いです。
ミダゾラムでせん妄が発生する理由の一説
ミダゾラムはGABA受容体と結合することによりニューロンの活動を抑制する。ミダゾラムを中止することでGABAによる抑制が解かれてニューロンの過剰な興奮を引き起こし、せん妄が発生すると考えられています。
痛み不穏せん妄管理ガイドラインでもベンゾジアゼピン系を第一選択とするのは避け投与する場合も可能な限り投与量を減らす必要があると考えられています。
まとめ
ミダゾラム(ドルミカム®)は安全に使用出来るお薬ですが、高齢者への使用は気を付けた方が良いというのを痛感した症例がありました。以前80代男性の手術時、痛みが強い患者さんへ鎮痛薬を使用しても痛みの訴えが続いたため、医師がドルミカムでの鎮静の指示をだし、使用したところ不穏になって手術中に暴れて看護師4名で押さえてベットから落ちないように必死に支えたことがありました。やはり鎮痛と鎮静のバランスの良い使用が大切なんだなと思った症例でした。
ミダゾラム(ドルミカム®)の特徴と注意することをしっかり理解して、安全に使用することが大切です。
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