人工弁逢着方法「弁尖反転逢縫合法」と「大動脈弁上縫合法」

心臓血管外科

10年以上前の話ですが、心臓血管外科の介助に入って間もない頃大動脈弁置換術(AVR)の手術で生体弁と機械弁で縫合方法が違っており、渡す糸の針の向きの順番が違いました。

手順書通りに覚えて今日は、生体弁だから〝逆逆、逆順、順順・・・。″ 今日は機械弁だから〝順順、順逆、逆逆”・・・。と呪文のように頭の中で唱えて覚えていました。

先輩に聞いたら「インターナルとスープラ―の違いよ」と言うだけで、意味が分からない!!

昔は、分かりやすく教えてくれる先輩が少なかったんですよね。そのため、意味不明なまま介助についていました。今思えば先輩も医師に言われた言葉をそのまま言っていただけで、ちゃんと理解していなかったのでは・・!?なんて思ったりします。

今では書籍でも詳しく説明されているので、分かりやすくなっています。

弁尖反転縫合法(intaea annular法)=水平マットレス縫合

大動脈弁輪をプレジェットもしくはスパゲッティ補強を付けた両端針で大動脈側から左室側に刺入し、これを人工弁カフに通し、人工弁を固定する方法です。

大動脈弁切除断端が補強部材にはさまる形で大動脈側に反転するためこの名前が付いています。

水平マットレス縫合は、人工弁をintra-annular positionに植え込むための縫合方法です。

左室流出路に切除断端が突出しないため、弁下での狭窄や機械弁との干渉などの懸念がないです。

しかし、縫合糸結紮の際に組織を反転して引き込むため弁輪縫縮効果があり、他の縫合方法と比べて1サイズ小さな弁口面積の人工弁を選択する必要があります。

機械弁の症例で弁輪径に余裕のある場合に推奨されます。

僧帽弁の場合は、日本ではIntra-annularが多く採用されています。

大動脈弁上縫合法(supra annular法)=垂直マットレス縫合

弁輪反転縫合法と同様の両端針を使用しますが、違いは左室流出路側(弁輪の下側)から大動脈側に運針する点です。大動脈弁輪上に乗る形になるため、反転法と比較して大きなサイズの人工弁が使用できるため、生体弁の狭小弁輪の症例には多く用いられています。

垂直マットレス縫合は、人工弁をsupra annular  positionに植え込むための縫合方法です。

ここで注意が必要なのが、生体弁・機械弁いずれの弁を使用した場合でも運針の際に弁輪下部の組織を過剰にすくうと、人工弁輪の内側にはみ出して有効弁口面積を狭めてしまう危惧があることです。特に機械弁使用の際には、将来的に組織増殖の原因となるため、さらに注意が必要です。

機械弁で術後遠隔期に弁輪下部の組織増殖が起こるとの原因となり、急激な血行動態の悪化きたし再手術を要することとなります。また弁の上に乗るため冠動脈入口部と干渉することがあるので、注意が必要です。

弁尖反転縫合法(intaea annular法)と大動脈弁上縫合法(supra annular)の比較一覧表

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