人工心肺の実際(カニュレーション→離脱まで)

人工心肺
後輩

人工心肺開始、維持、終了までの基本的な流れがいまいち分からない。

後輩

術中に技師さんと医師が流量や圧の事を話しているけど基準値がよく分からない。

このようなことを思っている人にオススメの記事です。

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人工心肺の基本についてこの動画がオススメです。

人工心肺

10年前に日総研で発売された『心臓血管外科手術器械出し完全マスター』のDVDのようです。

現在は販売されてないみたいです。

人工心肺の実際の流れ

ヘパリン投与、ACT測定

・麻酔科からヘパリンの投与を行い、その後ACTの測定を行う。

投与量は当院では体重×0.3です。例えば)50kgの人だと50kg×0.3=15ml

ACT:200秒以上⇒術野出血を人工心肺で吸引可能

ACT:400秒以上⇒体外循環開始可能

カニュレーション

送血管挿入

・人工心肺から患者に血液を送る送血管を上行大動脈から挿入する。

・送血回路が接続された後、拍動の確認をする。送血管が血管の内腔まで達していない可能性があり、この状態で送血を開始してしまうと大動脈解離を引き起こしてしまう。

・私は送血と同時に大動脈解離になった症例を経験したことがあります。下行大動脈までいっきに医原性の大動脈解離を起こしてしまうため注意が必要です。

脱血管挿入

患者の血液を人工心肺に戻す管を挿入

体外循環の開始(Pump On

人工心肺へ酸素ガスの吹送を開始

目標とする体外循環量まであげる

・送血圧、血圧を確認しながら徐々に目標とする体外循環血流量まで上げていく。

・至適体外循環血流量=患者体表面×体外循環係数(PI:perfusion index)
  PIは成人で2.2~2.6L/min/㎡とされている。

・人工心肺開始時に急激な送脱血を行うと、体内の循環血液が充填液により急激に希釈されるため、ショック同様の状態になり、動脈圧が急激に低下するイニシャルドロップが生じることが多い。そのため、開始時は脱血量と送血量のバランスを慎重にとりながら、徐々に至適灌流量(total flow)まで増やしていく。

・この時点では生体の心臓も活動しているため、循環の血液の一部が人工心肺により循環されている。この状態を部分体外循環と呼ぶ。心臓にも血液が流れ込み肺循環も行われるため生体肺の換気(麻酔機での換気)は維持する。

・体外循環が開始されると心臓と人工心肺により循環が維持されている状態になる。

・貯血レベルをあげると心臓への血液の流量が減り、CVPは下がり心臓の前負荷が減少して心臓からの拍出量が減り脈圧が小さくなってゆく。

・冷却すると心筋の収縮力が落ちて脈拍も少なくなる。

冠動脈カニューレ挿入(逆行性管灌流)

・心筋保護液注入用カニューレの挿入を行う。

先端圧は50mmHg

・冠動脈洞先端損傷防止のためカニューレ先端圧のモニタリングを行う。

左心ベントカニューレ挿入

・心室に血液が充満し、心筋の過進展予防のためのカニューレを挿入する。

・無血視野確保と心内空気抜きの目的もある。

大動脈基部カニューレ挿入(順行性冠灌流)

・心筋保護液注入用カニューレ挿入

・ARがある場合や遮断が甘い場合は十分な心筋保護は行えない

完全体外循環

・生体の心臓ボンプ機能が失われ血液灌流の全て人工心肺により維持されている状態を完全体外循環とよぶ。

完全体外循環に移行する時点
1.上大静脈と下大静脈から脱血していて、上下の脱血カニューレの周囲を締めた時
2.大動脈に遮断鉗子をかけた時
3.心室細動となった時

•完全体外循環に移行したら肺循環もなくなるので麻酔機の換気を止める

心筋保護液注入

・心筋保護液を投与すると心筋の活動は抑制され心電図はフラットになる。

・30分おきに冠動脈に注入する。

・フラットにならない場合は、心筋に十分行き渡っていないと考えられるため、追加する。

体外循環の維持

・心電図、血圧、呼吸ととに平坦化して体温も低く、一見生命活動があるようには感じられないが、血圧が平坦ながら60mmHg程度あることが人工心肺によって生命が維持されている証である。

血液のサンプリング

・30分おきにACT、血液ガスを測定する

・血液データに基づいて薬剤で補正、必要時輸血を行う

Hot Shot注入

・心臓をしっかりと止めエネルギー源を蓄え自己心拍再開に備える

・37度の温かい血液にカリウム・アミノ酸・抗不整脈薬を灌流させる

エアー抜き

・手術中に侵入した心腔内あるいは大動脈の気泡を除去するために、心臓内部に血液を充満させる。

・中心静脈圧を5mmHg程度になるようにする。

・心臓内部の気泡除去操作が終わったら中心静脈圧を1〜2mmHg程度に下げ、ベントは心腔内が陰圧にならないように止めるか流量を落とす。

大動脈遮断解除

・体位はヘッドダウンにし、右冠動脈口を用手的に圧迫しながら、一時的に送血ポンプの流量を落とし灌流圧を下げてから大動脈遮断を解除する。

・大動脈の遮断解除の時点から冠動脈に血液が流入し、心筋保護液は流され心臓は活動を始めようとする。心筋にフルパワーが戻るには多少の時間が必要となる。

心拍再開

・自らは拍動を始めることもあるが、心室細動のまま同調律に戻らない場合や、冠動脈内に大動脈基部からの空気混入によって心室細動を起こした場合は、DCパッドを当てて電気的除細動が行われる。

・心筋保護液による刺激伝導系への作用が残り徐脈となり、一時的に体外式ペーシングを必要とする場合もある。

・麻酔器からの換気が再開する:換気の再開忘れは、心機能悪化や脳低酸素血症に陥る危険がある。

体外循環からの離脱

・脈圧が増大し心拍出量の増加が確認できたら、体外循環血流量を減らしていく。
・貯血レベルを徐々に下げて心臓の前負荷を増やして、脈圧が出ることを確認する。

人工心肺からの離脱条件

1.生体の心肺機能の回復:平均血圧60mmHg以上

2.適切なCVPまたは肺動脈圧の維持
心機能が十分回復している場合には中心静脈圧5〜10mmHg程度で十分な心拍量が得られる。

3.術野での止血の確認:吸引回路の血液量が許容範囲である
止血のために心臓や大血管を圧迫すると心機能の低下を招くので、確実な止血が必要

4.ACTのコントロール良好

5.確実な復温:膀胱温35度以上、咽頭温36度以上
血液温の上昇は早いが、整体の隅々まで復温するには時間を要する。
復温が十分でなく局所的に温度が低いと人工心肺離脱後次第に低体温なり、最悪の場合心停止の危険もある。

6.Svo2:60%以上
静脈血酸素飽和度 (Svo2)は生体に送った酸素が生体内で消費され、残った酸素の割合を示す。

体外循環完全停止(Pump Off)

・送血量を減らしても血圧が平均血圧60mmHg維持できれば完全に停止する。

どうして血圧60mmHgなのか?
能の血流は、脳の灌流圧が50~150mmHgの範囲で自動調節能によって脳血流が一定に保たれるためです。

参考・引用文献

・人工心肺ハンドブック

・最新 人工心肺

・徹底ガイド 心臓麻酔 Q&A

 

 

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