人工心肺の基本 「脱血部位」

人工心肺



脱血部位の選択は主に3つあります

  1. 1本脱血(右心房・下大静脈脱血)
  2. 2本脱血(上大静脈、下大動脈脱血)
  3. 大腿静脈脱血(FV脱血)

1本脱血(右心房・下大静脈脱血)

 

適応:右房を開けない手術に使用します
大動脈弁置換術、大動脈弓部置換術、on pump CABG など

特徴:
・右心房から1本で脱血するので1本脱血と呼ばれています。


・2段式で、先端とカニューレの中ほどに開口部があります。

・先端は下大静脈の血液を脱血し、サイドホールは、右心房で上大動脈、冠静脈から灌流する血液を脱血します。
・この方法は、肺循環血流が残存する可能性があるため定義的には部分体外循環となります。

2本脱血(上大静脈、下大動脈脱血)

適応:右房を開ける手術に使用されます
心房中隔欠損、心室中隔欠損、僧帽弁、三尖弁、Maze手術など
特徴:
・脱血管を上大静脈と下大静脈に直接それぞれ挿入する事から2本脱血と呼ばれています。
・大静脈にテーピングしてターニケットで締めることで、上下静脈からの灌流血すべてを体外に脱血することができます。
・肺循環も断絶することで完全体外循環とすることが出来ます。
・冠静脈からの灌流血は脱血されないため右心房を切開する必要があります。

 

 

・下大静脈は右心房あたりでは太く見えるが末梢へいくほど細くなる。そのため、太すぎるカニューラを挿入すると、下大静脈に開口する肝静脈を閉塞する危険があります。
・下大静脈へのカニュレーション時、10%の確率で肝静脈へカニュレーションされる事があるのでTEE(経食道心エコー)でカニューラの先端位置の確認を行う事が必要です。

大腿静脈脱血(FV脱血)

適応:側開胸による手術、小切開手術、再手術時に使用されます。
MICS,胸腹部大動脈置換術、PCPSなど
特徴:
・50~60cm程度の長い脱血カニューレを大腿動脈から挿入し、右心房または下大静脈付近に留置する。
・大腿動脈からのアプローチするため、脱血カニューレサイズは制限される。
・MICS(僧房弁手術)では、無血術野を作るのが難しい。
私が経験したトラブル
大静脈脱血カニューラが誤って肝静脈に挿入され,腹部膨満,腹水貯留の合併症が起こった事があります。TEE(経食道心エコー)確認して挿入していましたが、慢性解離の患者さんで血管が複雑な構造へ変化している場合は、特に注意が必要なようです。
【豆知識】
大腿静脈から脱血カニューレを挿入する場合は、右大腿静脈から挿入した方が解剖的に挿入しやすいため、血管に問題がなければほとんどが右から挿入されます。
・TEE(経食道心エコー)の確認する事はもちろんですが、自施設では術中透視を使用しています。医師によっては必要ではないと言う人もいますが、術中透視を使用するようになって、大腿静脈(FV脱血)からの脱血でのトラブルはなくなりました。



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