人工心肺中のヘモグロビン尿とハプトグロビン

人工心肺

ある日、手術が終わった後に後輩から質問をされました。

後輩
後輩

心臓血管外科の血尿にはハプトグロビンを使う事が多いんですか?

他の診療科で使った事ないんですが・・・?

先輩
先輩

あれは血尿ではなくて溶血してるんだよ!

それで、ハプトグロビンを使ってるんだよ!

人工心肺中どうして溶血するの?

吸引で血液を吸う際の血球破壊、人工心肺や回路内でのローラーポンプや乱流による血液のすり潰し、送血管からの送血が血管内ジェット乱流おをつくることによる血球破壊などの原因があげられます。生理的範囲を超えた外的要因を受けて血球が破壊されると溶血を起こします。
また、赤血球の溶血により生じる遊離ヘモグロビンは人工心肺時間の長さによって増加する傾向があり、長時間の人工心肺により赤血球の損傷が増加します。

溶血を予防する方法は?

脱血不良による溶血を防ぐためにも太い脱血管の選択は有用です。
人工肺前、人工肺後の圧評価が可能な時は参考にし原因の解決を図る事が大切です。
人工心肺中の原因は以下の事が考えられます。

  • 回路内に血栓やフィブリンの塊が存在する場合
  • 脱血管の吸引圧が高くなった場合
  • 回路抵抗が上昇した場合
  • カニューレが屈曲している場合
  • 送血管が先あたりしている場合
  • ポンプが異常の場合

    ヘモグロビン尿って何?

    溶血によって産生される遊離ヘモグロビン(F—HB)は肝臓で代謝されますが、体外循環中の機械的な赤血球破壊によって溶血が起こると,遊離ヘモグロビン が短時間のうちに大量に産生される。すると、肝臓におけるヘモグロビンからビリルビンへの代謝が間に合わなくなり、尿中にヘモグロビンが排泄されます。これがヘモグロビン尿症です。

    溶血・ヘモグロビン尿はどのような影響があるの?

    生理的循環下において,血中遊離ヘモグロビンはハプトグロビンと結合して肝臓で代謝されるため,腎臓への影響は少ないです。しかし大量の溶血は急性尿細管死を引き起こします。これが尿細管での色素の沈殿による尿細管流の阻害なのか、あるいは溶血した赤血球から遊離したヘモグロビン以外の物質による糸球体と尿細管の障害であるのかは、あきらかではありません。
    また尿中ヘモグロビンも活性酸素を介し腎機能障害を引き起こします。
    さらに血中遊離ヘモグロビンは,血管拡張物質である一酸化窒素(NO)を減少させることによって血管収縮を招き,循環障害から多臓器障害を惹起すると言われています。

    どうしてハプトグロビンを投与するの?

    ヘモグロビン尿症を認めた場合の対症療法として、ハプトグロビン投与が行われます。
    成人症例では、4,000単位投与します。
    薬の値段は、約5万円/100ml/2,000単位と高価な薬です。
    ハプトグロビンは主に肝臓で生産される蛋白で極めて強固にヘモグロビンと結合します。
    この結合体が細網内皮系に速やかに取り込まれ分解処理されることで、ヘモグロビン毒性の中和と、腎糸球体からのヘモグロビン喪失を防止します。
    しかし、血中のヘモグロビン濃度の上昇を抑えるという報告はいくつかありますが、尿細管機能を向上させなかったという報告もあり、ハプトグロビン投与が腎保護に結び付くというエビデンスはありません。

     

     

     

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