開胸手術でCO2を術野に流す有用な機序について

人工心肺



1.炭酸ガス(CO2)術野への送気は、心腔内に残る空気を激減させる。

・開心術後、切開した心腔内に空気(気泡)が遺残すると、心臓の拍動再開によりその空気(気泡)は全身に飛散します。空気が脳血管に飛散した場合には、致死的な合併症の空気塞栓の原因になることから、塞栓の原因とならないように炭酸ガス(CO2)を持続的に術野(開心部)に送気して、心腔内に入り込んだ空気を炭酸ガス(CO2)に置き換える方法(心腔内の炭酸ガス(CO2)化)が米国で考案され、現在にいたっています。

・1997年には、炭酸ガス(CO2)を術野に流すことが、開心術後の心腔内に残存する空気(気泡)量にどのような影響を及ぼしているが、経食道エコー法によりもモニターした海外文献報告は以下のようになっています。
①術野を炭酸ガス(CO2)で充満させることなく心臓弁手術を行った22例では、手術終了時に徹底的に脱気操作を行ったにもかかわらず、全例で心拍再開後30分以上、多数例で45分間にわたり気泡が認められた。

②術野を炭酸ガス(CO2)で充満させて心臓手術を行った56例では、48例で心拍再開1分以内に気泡が完全に消失し、残り8例でも、心拍再開後1~24分以内に気泡が完全に消失した。

・心臓を閉鎖した後に、肺の加圧と体位をローテーションし、左心耳をタッピングし、大動脈基部のルートカニューラから空気を抜く通常の脱気手技に比べて、炭酸ガス(CO2)を術野に持続的に流す方が、合併症の原因となる心内腔に遺残する空気を激減させることが可能と報告されています。

2.心腔内深部から炭酸ガス(CO2)を送気する方法は、従来の方法と比べて効果的に心嚢内を炭酸ガス(CO2)化する。

・今まで行われている炭酸ガス(CO2)を送気する方法は、炭酸ガス(CO2)が空気に比べて重たいという性質を利用して、術野の上から開胸部全体に送気されています。

・この送気方法では、心腔内深部の空気を追い出すために大量の炭酸ガス(CO2)送気が必要となり、その大量送気時に発生する空気の巻き込み等により、効果的な心腔内の炭酸ガス(CO2)化(空気の追い出し)が行えない事も考えられます。

・心腔内深部より炭酸ガス(CO2)送気を行うと、炭酸ガスの性質上、送気された炭酸ガス(CO2)は深部より上方に向かって心腔内空気を追い出しながら充満します。

・炭酸ガス(CO2)の送気は、術野の上から全体に大量送気するより、心腔内深部より送気する法が、少量の送気量で効果的に心腔内の炭酸ガス(CO2)化(空気の追い出し)が行えます。

コメント

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