大動脈弁置換術(AVR)の大動脈閉鎖不全症(AR)と大動脈狭窄症(AS)の違うところ

心臓血管外科

大動脈弁置換の手術でARとASで手順と準備する機械が微妙に変わりますよね。

手術に慣れてくると当たり前のことですが、心臓外科の手術に入りだした頃はその違いが分からなかったりします。ARとASで手技、使用する機械の違いを3つ紹介します。

1.心筋保護液注入のルートが変わる

大動脈狭窄症(AS)の場合

・普通に上行大動脈にルートカニューレを挿入して注入します。

・医師の好みで逆行性管カニューラを挿入します。

逆行性管カニューラを挿入する理由は、AVRでは大動脈を切除してしまうためルートカニューラから注入できるのは、初回のみとなります。30分で上行大動脈閉鎖まで終わった場合は、1回の注入で終わります。しかし、追加投与が必要な場合は、冠状動脈直接注入法で冠動脈に直接カニューレで注入するか、逆行性管カニューレで心筋保護液の追加投与を行います。追加投与の方法は医師の好みで変わります。逆行性管カニューラを信用していない医師もいます。

大動脈閉鎖不全症(AR)の場合

・逆流の程度によりますが、逆流が高度の場合はルートカニューレを使用しません。

理由:大動脈閉鎖不全症では、拡張期に大動脈弁がしっかり閉じないため、上行大動脈から注入された心筋保護液は心室の方へ流れて行き、冠動脈に流れて行きません。そのため高度の逆流がある時はルートカニューレを入れないことが多いです。上行大動脈を遮断した後すぐに大動脈を切開して、冠動脈に直接カニューレで心筋保護液を注入します。

2.大動脈弁を切除する時に石灰化の除去を行うか否か

大動脈狭窄症(AS)の場合

・大動脈狭窄症の原因は弁が肥厚、硬化、石灰化により大動脈弁の開きが悪くなっています。
石灰化の部分を切除するための機械と石灰化が心室内に落ち込まないように左室流出路用のガーゼが必要になります。最近はキューサーやソノペットを使用することが増えています。ただ、キューサーはコスト加算が取れないためランニングコスト(吸引、送水チューブやチップ先のディスポの材料)は病院の持ち出しになります。
・弁尖を無冠尖、右冠尖、左冠尖を剪刀で切除します。
・石灰化が左室内に落ち込まないようにガーゼを挿入します。
・キューサーやロンジュールや剪刀で石灰化を切除していきます。

大動脈閉鎖不全症(AR)の場合

・弁尖を無冠尖、右冠尖、左冠尖を剪刀で切除します。

・ARの場合は、弁尖を切除したらすぐに弁置換の糸掛けが始まるため、心筋保護液を注入している間に、弁置換で必要な器械と糸とサイザーまで準備までしておく必要があります。

3.ARの患者さんは上行大動脈が薄いことがあるので大動脈閉鎖の方法が変わる事がある。

・大動脈弁逆流症は、大動脈弁自体に原因がある場合と、大動脈基部に異常がある場合があります。
※二尖弁の患者では、上行大動脈が拡大することがあります。

 

・大動脈の拡張により大動脈弁輪が広がり閉鎖不全になっている場合は、大動脈の拡張により上行大動脈が薄くなっていることがあります。その場合は、大動脈閉鎖をいつもは連続縫合している場合でも、帯状のフェルトを全周に巻いて縫合したり、糸を1本1本使用した結紮縫合をすることがあります。
※大動脈基部が50mm以上の場合はBentallになります。

 

 

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