Sapien3とEvolutの違い

ストラクチャー

Sapien3の特徴

・冠動脈ステントと留置様式が同じくバルーン拡張型です。
・フレームはコバルトクロム製、生体弁は牛心膜を使用しています。
・アプローチ部位は、Sapien3になってから90%以上の患者で大動脈アプローチが可能となっています。
・シースの径は、E-Sheathと呼ばれる自己拡張型のシースを使用します。
20mm、23mm、26mmの弁は、14Frを使用。29mm弁であれば16Frを使用します

 Edwardsホームページより引用

Evolut R  の特徴

・Core Valveシリーズの1つであるEvolutは自己拡張型のシステムです。
・自己拡張型とは、温度感応型の形状記憶合金をフレームに有しており冷却した滅菌生理食塩液(0~8℃)で形状を変えることが出来、温めると自然と元の形に戻ります。
・ステントフレームはナイチノール製、生体弁はブタ心膜を使用しています。
1/3~2/3を弁を展開している時、血圧は低下します。2/3展開後血圧は回復します。
・リキャプチャーとリポジションが最大3回まで可能。(再収納が可能)
・自己拡張型であるため留置時にラピットペーシングは必須ではないです。
・構造上心尖部アプローチは不可能ですが、鎖骨下動脈や上行大動脈からのアプローチが可能です。
・留置部位:自己弁の大動脈弁の位置よりも高い位置(スープラアニュラーポジション)にて機能するため、より広い弁口面積を確保することができます。
・シースの径:生体弁: 23mm、26mm、29mm ⇒ 14Fr相当のInLineシース使用。
※InLine(インライン)シースとは、一体型のイントロデューサシースのことです。

メドトロニック株式会社ホームページより引用

Sapie3とEvolut の特徴一覧表

Sapie3とEvolut の合併症・リスクに対する比較

 

1. 弁輪破裂のリスク

サピエンは、弁輪破裂の頻度としては約1%と言われ、原因としては左室流出路から続く粗大な石灰化および弁輪面積と比べ20%以上のオーバーサイズの弁を選択すると生じやすいと言われています。
コアバルブシリーズは、自己拡張型であり、大規模研究でも弁輪破裂は0%であり、弁輪破裂ハイリスク患者に対してはEvolutに代表される自己拡張型が有利であると考えられています。

2. 冠動脈閉塞リスク

冠動脈閉塞の頻度もCoreValveシリーズでは低率であるため、弁輪部から冠動脈までの距離が短い患者や弁尖の石灰化が著明な患者ではSapien3よりもEvolutRが考慮されます。
しかし日本人はValsalva径が小さい患者が多いためEvolutでも冠動脈閉塞に対する注意が必要であると考えられています。Evolutで冠動脈閉塞を生じた場合は、ステントフレーム越しにカテーテルを操作し血行再建を試みることになるため、困難な場合があります。
その場合はEvolutをスネアでつかんで引き抜くが、開胸のバイパス手術への移行などを考慮する必要があります。

3.血管アクセス

Evolut Rのシステムは外径が14Frシースであり、Sapienで使用するE-sheathよりもよりアクセス径が小さい患者でも挿入可能と考えられます。またSapienでは適応ではなかった経鎖骨下動脈のアプローチが可能となり、低心機能や呼吸機能が悪く心尖部アプローチを躊躇する症例などでEvolutがよい適応となる場合があります。

4.恒久的ペースメーカー留置となる割合

Evolutは構造上、刺激伝導系に障害を与える可能性が強く、術後恒久的ペースメーカーを必要とした比率は約15~20%とSapienの2倍以上の頻度で生じている。術前よりⅠ度ブロックおよびCRBBB、左軸偏位を認める患者、手術中の完全房室ブロックはペースメーカー植え込みの予測因子であるとされ、Sapien3の使用が推奨されます。
・Evolutの場合、8mm以上バルサルバの方へ留置した場合は、ブロックになりやすくなります。4~6mmではブロックになりにくいです。しかし、カテ操作などでブロックになることもあります。

5.2尖弁

2尖弁は一般的に弁尖の石灰化が強く弁の開大が困難で術後大動脈弁逆流(AR)が生じやすいと考えられます。ARではよりシーリングされるSapien3が、高度な弁尖の石灰化では破裂の危険が少ないEvolut が有利です。Type0の2尖弁やrapheが高度に石灰化で癒合している場合には弁輪が開大しないのでスープラアニュラーポジションのEvolut が効果を発揮すると考えられます。しかしARの問題は残るため、どちらの問題は残ります。どちらの弁を選ぶかは弁輪の石灰化の程度や術前のARの程度などを考慮して選択する必要があります。

6.狭小弁輪、Valve in Valve

狭小弁輪では大動脈弁位に弁が植え込まれるSapien3ではスカートがある分、有効弁口面積が小さくなってしまいPatient prosthesis mismatch(PPM)の発生が危惧されます。また、Valve in Valveでもそういった観点からはsupra-annular leaflet positionであるEvolutRのほうがよりPPMを残しにくい傾向にあると考えられます。

補足:PPMとは、簡単に言えば、患者の体格に対して不適切に小さい人工弁が留置された結果、十分な有効弁口面積(EOA)が得られない現象のことです。重度のPPM が存在すると術後左室肥大の改善不良や院内死亡率が高 く,左室機能低下を伴う例ではさらに早期死亡率が上昇するとの報告もあり,術後早期から長期予後にわたり予後が不良であることが示されています.
自身の経験: Acute AR時のバルブの違い
TAVI弁を挿入する前にバルーン拡張(preBAV)で大動脈弁を拡張した時に急性大動脈閉鎖不全症( Acute AR)になる時があります。 Acute ARになると血圧が急激に低下します。ラピットペーシング後なら血圧が元に戻らないという状態になります。サピエンの場合は、急いで弁を挿入、拡張、留置することで血圧が回復します。
しかし, Evolutの場合は、自己拡張型のため急いで留置しても完全に拡張するまでに時間がかかります。そのため、Evolutで前拡張(preBAV)を行う際は注意が必要です。

参考文献

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