今回は、TAVI(TF)エドワーズ サピエン3の手順をまとめたいと思います。TAVIは2013年に日本で保険償還されてから認定施設も症例数も増えてきています。
2019年PARTNER3trialでは、AVIは開心術の大動脈弁置換術と遜色無い治療であると発表されています。
TAVI(Transcatheter Aortic Valve Implantation):経カテーテル的大動脈弁留置術TF(transfemoral approach: ):経大腿動脈 アプローチ
エドワーズ サピエン3の動画
Edwardsホームページより引用
TAVI(TF)手順(サピエン3)
1.左右大腿動脈穿刺シース挿入、左右大腿静脈穿刺シース挿入
シースの役割 (施設よってはエマージェンシー用の静脈シースを入れないようです)
2.体外式ペースメーカー挿入
静脈シースから体外式ペーシンングカテーテルを挿入。ペーシングテストを行う。
3.ピッグテール挿入
動脈シースからピックテール+ラジフォーカスガイドワイヤ-を挿入し、ラジフォーカスガイドワイヤーを抜去。ピックカテーテルの端をインジェクター(造影剤注入器)へ接続し、造影を行う。
4.Eシース挿入
メインルートのEシースは14Fr~16Frと太いシースを入れるため、止血の目的で、パークローズで経皮的にタバコ縫合をおこないます。そのため、他のシースの挿入より少し手順が複雑になります。
パークローズの動画
5.自己弁を通過させる。
カテはAL-1 やJR4などとストレートのガイドワイヤーで大動脈弁を通過しやすいカテとガイドワイヤーを使用し、頑張って通過させる。
6.左室へワイヤーを挿入
ピックカテーテル+ラジフォーカスガイドワイヤーで左室内へカテーテルを進める。いい位置が決まったらガイドワイヤーをサファリ(先端がクルクルしたもの)へ交換する。
※左室を穿孔しないようにするために先端がクルクルしたガイドワイヤーへ交換する。
人工腱索をひっかけたり、僧帽弁閉鎖不全症がでていない場所へ留置する。
7.バルーン拡張(preBAV)
ラピットペーシングをしながらバルーンを拡張し、大動脈弁を拡張する。大動脈閉鎖不全症になる時がある。
8.人工弁挿入・留置
デリバリーシステムを挿入し、大動脈弁の位置を合わせラピットペーシングを行いバルーンを拡張し留置する。
9.バルーン拡張(postBAV)
弁周囲逆流が確認された場合必要時に、もう一度バルンを拡張を行う。
10.大動脈造影(AoG)
ピックテールから最終確認の造影を行う。
11.シース抜去
①サファリガイドワイヤー越しにピックテールカテーテルを挿入し、ガイドワイヤーをラジフォーカスガイドワイヤーへ交換する。
②下行大動脈までカテーテルを引き抜いたら、ガイドワイヤーをスティフガイドワイヤー(硬いガイドワイヤー)へ交換する。
③ガイドワイヤーからEシースの内筒を挿入し、シースを抜去する。
④パワークローズであらかじめかけていた糸を閉めて、糸を切る。
なぜEシースの内筒を挿入しないといけないのか?
Eシースの構造で、シースの中にデリバリーシステムを挿入するとシースが拡張し、血管に長時間拡張され続ける時間を低減される仕組みがあります。しかし、デリバリーシステムを抜去した時に再びシースが元にもどりますが、その際血管の内膜を巻き込み収縮してしまう事があるため、内筒を挿入し拡張させた状態でEシースを抜去します。
12.下肢血管造影
メインのアクセス用の動脈にはかなりの負担がかかっているため、下肢の血管に解離が起きていないこと、損傷をしていない事を確認してから手術が終了となります。
次回はTAVIで重要な合併症、サピエンとEvolutの違いについてもまとめたいと思います。
コメント
こんにちは、わかりやすい説明で大変勉強になりました。
2点ほどわからないところがあり、質問させて頂きたいと思いコメントしました。
1年目なので変なことを聞いてしまっていたら申し訳ありません。
1. pre BAVは「石灰化が起こっている弁を広げることでデバイスが通れるようにするために行う」といった認識で良いのでしょうか?
またそうであるならなぜ、JL1などのカテーテルを上げる時に早めにバルーンを広げないのでしょうか?(広げたほうがA弁通過時にコントロールペーシングしなくても、物が通れるのでは?と思いました。)
2. preBAVをしない人もいると思うのですが、そういった人は「何を指標に」しないといった判断になるのでしょうか?
AVAの大きさですか?また、それらの指標はどのラインをボーダーとしてするかどうかを判断するのでしょうか?(例えばAVAなら値的にはいくらでしなくなるのか?)
「」で示している部分が今回特に回答がほしいところでそれ以外はもしご存知あれば知識として知っておきたいと思い質問させていただきました。
拙い文でまとまっておらず、失礼な表現や非常にわかりにくい部分があるかと思いますが、ご回答いただければと思います。
よろしくお願いいたします。
いっしーさんへ
コメントありがとうございます。コメントに気がつかずに返信が遅くなって大変申し訳ありません。
1年目でTAVIについて勉強されているのがすごいと思いました。
1. pre BAVは「石灰化が起こっている弁を広げることでデバイスが通れるようにするために行う」といった認識で良いのでしょうか?
回答:
Pre BAVを行う目的は、石灰化を広げてデリバリーシステムを通過しやすくするという認識でだいたい大丈夫です。
しかし、私の解釈が間違っていたら申し訳ないのですが、いっしーさんの「デバイス」にJL1やピックテールなどのカテやガイドワイヤーが含まれている気がしました。
私の指している「デバイス」は弁がセットされた太いデリバリーシステム本体になります。
PreBAVの目的は他にもあります。
①サイズ選択に迷った時の自己弁のサイジング
②冠動脈の評価
③弁輪計測の確認
④自己弁尖と石灰化の動きの確認
などです。
またそうであるならなぜ、JL1などのカテーテルを上げる時に早めにバルーンを広げないのでしょうか?(広げたほうがA弁通過時にコントロールペーシングしなくても、物が通れるのでは?と思いました。)
回答:
JL1などでA弁を通過させサファリなどの硬いワイヤーに交換した後でないとBAV用のデバイスが通せないなためA弁通過前にBAVを行うことは難しいです。それと、pre BAVを行うメリットもありますが、デメリットとして弁が開放しっぱなしのacuteAR(1%の頻度で起こる可能性がある)になった場合、すぐに人工弁を留置しないといけません。そのため、acuteARが生じてもすぐに弁が留置できる状態にしてからpreBAVを行った方が安全です。
2. preBAVをしない人もいると思うのですが、そういった人は「何を指標に」しないといった判断になるのでしょうか? AVAの大きさですか?また、それらの指標はどのラインをボーダーとしてするかどうかを判断するのでしょうか?(例えばAVAなら値的にはいくらでしなくなるのか?)
回答:順向性で弁を通過しやすいため、弁口面積が比較的大きい場合はpreBAVを省略出来ます。各施設で決まりがあると思いますが、文献的には、AVA 0.5 cm2以上とされています。
問題解決になっていたらいいのですが、回答で分からないところがあったらまたコメントください。