左心耳閉鎖(Wstchman)とは?特徴は?
Watchmanデバイスは、2019年9月に保険適応になり日本循環器学会の施設基準に合致する施設で開始されました。鼠径部の静脈から細い管(カテーテル)を通して心臓に挿入し、左心耳を閉鎖してしまうデバイスです。クラゲのような形状をしていて可愛らしいです(*^-^*)
心原性脳塞栓の多くが心房細動によって発症しますが、その原因は飛散する血栓であり,その血栓の約9割が左心耳で形成されます。その血栓治療死亡を減らした治療法です。血栓治療死亡を減らした主な理由は,ほとんどの症例で抗凝固薬を中止できたためです。
【Watchmanを用いたPROTECT-AF試験デバイス群の2年後の結果】
1)94%の患者でワルファリン中止が可能となった.
2)脳卒中/全身1生塞栓/心血管死亡は薬物治療群と比較し有意に(40%)減少した.
3)全死亡率も有意に(34%)減少した。
【Wathmanの特徴】
Watchmanの手順
Boston Scientific Corporationホームページより引用
準備
・TEE(経食道エコー)を使用します。
⇒複雑な構造のために透視や造影所見のみではその構造が把握しきれないため経食道心エコー(TEE)ガイド下で行うのが原則です。
・TEE(経食道エコー)使用するため全身麻酔を行います。
・RFAシステムを使用します。(心房中隔穿刺用デバイス)
予備知識(Watchman)穿刺~左心耳までのルート
1.大腿静脈穿刺、シース挿入
・穿刺は、大腿静脈を穿刺します。
・SLOシースを挿入します。
2.ヘパリン投与
200~300秒の活性化凝固時間 (ACT)になるように投与を行います。
3.心房中隔穿刺
・RFニードルを使用し、心房中隔を穿刺します。
4.シースの入れ替え
・スーパースティッフワイヤーを挿入します。
・SLOシース抜去し、WATCHMANアクセスシース挿入します。
5.左房圧の計測
・ピックテールを挿入します。
・左房圧を計測し、15mmHg以上ならOK。左房圧が低い場合は、生食500mlの輸液負荷を行います。
6.左心耳へカテとシースを挿入する。
・左心耳へピックテールカテーテルを進めます。
・WATCHMANアクセスシースを左心耳へ進めていきます。
7.計測 ・造影
・TEEにてデバイスサイズを選択します。
・ピックテールカテーテルから左心耳の造影を行います。
8.デリバリーシステム挿入
・ピックテール抜去し、デリバリーシステム挿入 左心耳穿孔・空気塞栓によるST上昇に気を付けます。
9.留置
・TEEにて閉鎖デバイスのリリース基準(PASS)を確認します。
・OKの場合;デバイスを展開を行い、留置します。
・NGの場合;recapture(再収納)し、位置調整を行います。
8.デバイスの抜去、止血、閉鎖
・穿刺部位に1針糸で閉鎖し、手術終了します。
合併症と対応
WATCHMANデバイスの周術期に生じ得る重篤な合併症としては,①心タンポナーデ,②デバイス塞栓,③虚血性脳卒中が挙げられます。
WATCHMANデバイスの臨床応用が開始された当初は,左心耳内でのデリバリーシステムの操作などに伴う左心耳損傷による心タンポナーデの頻度が高いことが大きな懸念材料として挙げられていました。手技の向上に伴い,欧米で実施された市販後の登録研究では,高い手技成功率(>95%)および周術期合併症の低下(<2%)が報告されました。周術期の心タンポナーデの頻度は約1%前後まで低下しています。開胸になるリスクは0.2%です。
左心耳損傷による心タンポナーデになった時の対応
1)まずは、心嚢ドレナージを行います。血行動態安定すればドレナージのみです。
2)血行動態が不安定な場合は、外科的に開胸し止血術が行われます。
その場合は、ケイセントラ(ワーファリン拮抗薬)投与を行います。
ワーファリンは中止せずに手術を行っているため、かなり出血しやすい状況になっています。そのためケイセントラを投与してから開胸止血術が行われます。
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