大動脈弁閉鎖不全症の患者さんは足背動脈が触れやすい?

日常のできごと

ある日の大動脈閉鎖不全症の80代の患者さんの手術前に循環器の先生に言われたことがとても気になりました。

後輩

80代なので触れにくいかと思いましたが、足背動脈よく触れています!

ARがあると足背動脈よく触れるんだよね。

本当よく触れてるね!

後輩

へ―!!そうなんだー!!今まで気にしたことがなかった!!

大動脈弁閉鎖不全症の病態

大動脈弁閉鎖不全症では、心臓の収縮期の血圧(上の血圧)が上昇し、拡張期の血圧(下の血圧)が低下します。上の血圧(=収縮期血圧)と下の血圧(=拡張期血圧)の差を脈圧といいます。この脈圧の増大が大動脈弁閉鎖不全症の特徴です。

大動脈弁閉鎖不全症の逆流が高度になりますと、全身へ拍出した血液が大動脈弁が閉鎖しないため左室内へ血液が逆流し、戻ってきます。そのため、左心室は逆流量分の血液を余分に拍出する必要が出てきます。したがって、心拍出量が増大し、収縮期(上)の血圧が上昇し、拡張期(下)の血圧が下がって脈圧(正常値:40-60 mmHg)が大きくなり、左心室の拡大を生じてきます。

足背動脈が触れやすくなるのはなぜ?

大動脈弁閉鎖不全症の身体所見上特徴は、大きな脈圧(Corrigan pulse)です。

これは1回拍出量の増加による収縮期圧の上昇と末梢血管拡張などによる拡張期圧の低下が原因です。

この現象により上下肢の血圧差は大きくなります。(Hill’s sign)。

重症例では脈圧/収縮期圧が0.7以上となり、これは逆流の程度と相関するとされています。

この大きな脈圧が足背動脈が触知しやすくなる要因だそうです。

脈圧が大きいとドクン、ドクンとする動脈の振動の振れ幅が大きいため触知した時に脈拍を感じやすくなり、触知しやすくなるそうです。

このことを知っていると、大動脈弁閉鎖不全症の患者さんの足背動脈を触知するのがちょっと楽しみになりませんか?

心臓外科手術後の足背動脈触知で思うこと「術前にマーキングして欲しい」

手術開始前に必ず足背動脈を触知し、術後にも足背動脈触知をしますよね?

心臓外科の手術では、大動脈の手術や、大動脈を器械でクランプしたり、直接大腿動脈に送血管を挿入したり、術後にIABPやPCPSを挿入したりと血栓症や閉塞、血管損傷のリスクがあります。

心臓、大血管の手術後の至適血圧は症例ごとにさまざまです。心室中隔穿孔術後、僧帽弁術後、大動脈切開後、組織の脆弱な患者は一般的に低めの血圧がよいとされています。術前高血圧の患者、腎機能低下症例、頸動脈狭窄症例などにおいては高めの血圧が望ましいとされています。

術前は緊張している患者さんが多いため、血圧が130~200mmHgの方が多いですが、手術後の出血を懸念して血圧を低めに設定されていることが多いです。
そのため、術前は足背動脈がよく触れていても術後の足背動脈触知しにくくなっていることがよくあります。しかも、心臓外科の手術は長時間になることが多いため、間接介助看護師が違う人に交代することもあると思います。交代した場合、術前に足背動脈触れていました。と申し送りされても術後触れにくまたは、触れないとき、術前から本当に触れていたのか?術後触れなくなったのか?判断に迷うときがあります。

そのため、術前足背動脈触知して触れた場所にマーキングをお願いします。術後の判断に役に立ちます。

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